昨年度に引き続き、アメリカ司法が違憲審査に必要な諸資源を獲得・蓄積していく上で、現代アメリカ司法過程の諸制度・諸アクターがいかなる役割を果たしているかについて、調査・検討を行った。その成果の一部については、論文として公表した(見平典「アメリカ司法の制度的・政治的基盤」年報政治学2018-I号(2018年)147-170頁)。 また、日本において、いわゆる「応答的法」型の司法――実質的正義の実現や社会のニーズに対する応答に能動的であり、違憲審査に対しても積極的な司法――を実現するためには、そのような司法を支えられるだけの確かな政治的基盤を形成することが課題となる。そこで、この課題にいかに対処しうるかについて、滝井繁男・元最高裁判所裁判官の思想とアメリカ司法のありようを手がかりとして考察を行った。その成果の一部については、論文として公表した(見平典「応答的司法の政治的基盤と正統性」毛利透ほか編『比較憲法学の現状と展望――初宿正典先生古稀祝賀』(成文堂、2018年)459-477頁)。 この他、近年公刊された、日本司法の違憲審査活動に関する研究書の書評も公表した(見平典「書評 秋葉丈志著『国籍法違憲判決と日本の司法』」法社会学85号(2019年)253-257頁)。 このように、本研究期間全体を通して、日米の違憲審査制の動態と発展過程について多面的・学際的に検討し、その成果を公表することができた。それは、違憲審査制の憲法保障機能・人権保障機能に照らせば、学術的のみならず実践的にも意義を有するであろう。今後は、本研究では十分に取り上げることのできなかった動向や時期についても分析することにより、本研究をさらに拡張・発展させていきたい。
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