研究課題/領域番号 |
15K16918
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
栗田 佳泰 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60432837)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 信教の自由 / カナダ / アメリカ / 多文化主義 / accommodation / 憲法 / 比較憲法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、学校における子どもの信教の自由の保障と判断過程審査の日加比較にあるところ、初年度ではカナダにおける信教の自由の保障の在り方について、日米との比較を行った。というのも、日本においては、とくに信教の自由の分野においてアメリカの影響は強く、アメリカを抜きにしてカナダのみを比較憲法の対象とすることは、本研究の第一段階として説得力を欠くと考えたからである。 本年度の研究成果の具体的内容は、1カナダにおける「多文化主義」の理論的展開とカナダ政府の公式見解との連関を整理した、2信教の自由の分野における日米比較憲法の意義を再確認した、3日米加における信教の自由の保障の在り方について比較検討を行った、の3点にまとめられる。 本年度の研究成果の意義は、1カナダ政府の公式見解に近い政治哲学者ウィル・キムリッカの所論を視座として採用することの妥当性を明らかにした、2日米における信教の自由の比較憲法的意義を確認した、3米加における信教の自由の保障の在り方が、とりわけ「多文化主義」の観点から異なりうることを明らかにした、の3点にある。 本年度の研究成果の重要性は、カナダを比較憲法の対象とし、とりわけ信教の自由の分野においてそうした比較が有用であることを明らかにしたところにある。また米加との比較において、日本の最高裁における信教の自由の位置づけがあいまいであることも明らかにしたところにもある。さらに、信教の自由が憲法上の要請として何らかの合理的配慮措置(accommodation)を導く場合は米加でも極めて稀であり、その連関について、引き続き、研究を進める必要性が明らかとなったことも重要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第一段階として、カナダを比較憲法の対象とする意義について、アメリカを比較憲法の対象とする場合とは異なる魅力的な視座となりうることを示すべきところ、本年度の研究成果である信教の自由に関する日米加比較の序論的考察は、カナダにおける多文化主義に関する理論的展開を踏まえたうえで、カナダを魅力的な比較憲法の対象としてアピールすることに十分寄与するものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、憲法理論研究会や北陸公法判例研究会、あるいは所属機関の内部的な研究会で他の研究者らと意見交換をしながら、着実に研究成果を積み上げていく。 とりわけ今後は、憲法と教育法との連関の観点からの分析を深めるべく、当該領域における研究実績を有する東京学芸大学の斎藤一久准教授に教えを乞うなどしていきたい。 また、学校における人権保障の在り方について、出前授業等で高等学校等に赴く機会があれば活用し、現場の教師らから意見等を聴取し研究に活かすようにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究の初年度において、申請者は富山大学を転出、新潟大学に転入した。ついてはその移行に備えて、あえて物品の購入や出張等を控えたことがある。結果、予定していたよりも物品の購入や出張等に関する支出が減少した。
|
次年度使用額の使用計画 |
今後は、本研究の初年度に購入を予定していた物品を購入するとともに、手控えることなく出張等に行くことによって、予定していた研究・交流を滞りなく進めていく。具体的には、本研究の初年度では行くことのできなかった九州方面の研究者との交流の機会を設けていく。
|