日本の租税争訟における納税者と租税行政庁との間の柔軟な問題解決手法の導入に対しては、紛争の早期解決という観点から積極的な評価がみられた。一方で、固定資産税の誤課税をめぐる紛争処理の過程で自治体ごとに取扱いが異なったため、納税者間に不公平あるいは不公平感が生じ、固定資産税の賦課行政に対する不信をまねいている。財産評価をめぐっては、客観的な時価の立証がともすれば水掛け論に陥りやすく、訴訟経済上非効率である。客観的な時価にも一定の幅が想定されることからすれば、時価の客観性を担保しつつ、納税者と租税行政庁とが納得しうる評価制度の構築が必要である。
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