研究実績の概要 |
納税者間,納税者・国家間の経済関係に着目した租税法律関係に関する先行研究の調査・整理の一環として,米国組織再編税制の骨子と言われるCOI(Continuity of Interest)原理の起源と展開に関する批判的検討(William D. Andrews & Alan L. Feld, FEDERAL INCOME TAXATION OF CORPORATE TRANSACTIONS, at 75-136(1994))を手掛かりに,COIに依らず,法人・非法人に関する明示の選択を認めるチェック・ザ・ボックス規則と同様に,課税繰延べと時価課税との明示的な選択を認める制度改革(William D. Andrews, FEDERAL INCOME TAX PROJECT SUBCHAPTER C,PROPOSALS OF THE AMERICAN LAW INSTITUTE AND REPORTER'S STUDY, at 24-197(1982))の可能性と意義について検討を行い,論文として公表した(小塚真啓「組織再編成における課税関係の継続と断絶」岡法65巻3・4号949頁(2016年))。この検討(研究)は,米国組織再編税制におけるCOIが納税者間(法人取得取引における取得法人と対象法人との間)の経済的関係に必ずしも対応しない形式的なもので,課税繰延べと時価課税とを事実上選択できてしまうように形骸化している可能性を示すものであって,翌年度以降の研究において,その可能性を経済学の知見を用いたモデルを構築することでより精緻に示したり,上場企業の有価証券報告書などに現れた現実の取引を用いて実証的に示したりする基礎を築くものである。
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