平成28年度の研究を踏まえて、平成29年度では、自治体の①防御型参加手続と②協働型参加手続の具体的な検討・研究とその成果公表が進められた。①はドイツの航空交通法を素材として、②は我が国の原発法制を素材として、研究が進められた。 ①について、具体的には、「一般法型」参加と対置されるところの「個別法型」参加手続=国政参加の可能性を、裁判所による事後的救済制度との「連結」に見出し、その手掛かりとして、ドイツにおける自治体の絶対的手続権(個別法律上の参加的地位(規定)自体が主観的権利ないし原告適格を創出する)の議論を、ドイツ航空交通法の飛行場設置許可を素材として、ドイツ連邦行政裁判所判例を中心に検討した。 その結果、ドイツにおける自治体の絶対的手続権の承認は、飛行場設置という広域計画目的達成への自治体による「協働」と自己の地位の「防御」が、事前手続と事後手続との「結合」の中で適切に組み合わされたものであった、ということが明らかになった(以上の成果は、下記の『法学』81巻6号151-178頁にて公表された)。 ②について、具体的には、原発規制行政法理と福島第一原発事故後の制度改正から、①非条件プログラム性(目的プログラム性)と②リスクと便益の強度の偏在傾向という原子力リスク行政の特徴を描き、そこから、既存の学説を踏まえて、自治体の協働型参加の正統化根拠を探った(以上の成果は、「原発問題から検証する公法理論(地方自治論)」と題して、第5回「原発再稼働と法」研究会(2017年8月24日北海道大学)にて、また、「原発法制と自治体-原子炉等規制法への自治体の関与の正統性と法的根拠の検証-」と題して、第7回「熊本地震と法・政策」研究会(2018年3月20日)熊本大学)にて報告され、8月の『法律時報』において公表される予定である)。
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