冷戦後の国連安全保障理事会の機能変化に伴い,狙い撃ち制裁をはじめとして個人に直接的な影響を及ぼす活動が増加している。これを国際立憲主義(法の支配,権力分立,人権,民主的正当性など)の観点から捉え直す研究が進んできているが,民主的正当性に関する議論はまだ十分に行われていない。本研究では,民主的正当性の要素を取り込むための原理として,各国際法領域で発展してきた「補完性原則」を取り上げ,同原則に照らして様々な実行を検証し直した。補完性原則は安全保障理事会の文脈でも大きな可能性を秘めているが,前提条件として補完性原則に人権や民主的正当性の要素を埋め込む必要性が明らかになった。
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