研究課題/領域番号 |
15K16933
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
國武 英生 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (20453227)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イギリス労働法 / 労働契約 / 雇用契約 / 労働者性 / 労働契約概念の再定義 |
研究実績の概要 |
本研究は、雇用システムの変化や就業形態の多様化を受けて、従属的な労働契約関係を対象とする画一的な労働法規制が機能不全にあるという問題意識から、近代法の雇用契約概念を再定義することを企図する法的手法の意義と限界、その制度設計のあり方を検討するものである。 近年では、雇用システムの変化や就業形態の多様化、IT(情報技術)化の進展により、SOHO、テレワーク、在宅就業者といった雇用と自営の中間的な働き方や、フリーランスやクラウドワークといった働き方が急速に増加している。また、使用者のイニシアティブで契約形式や契約内容を変更することにより、労働関係法規の適用を免れようとする、いわば就業形態の「非雇用化」ともいうべき現象も顕著になっている。伝統的な従属的な労働関係を対象とする画一的な労働法規制は、多様化する就業形態の実態と乖離しつつあり、これまでの手法は判断基準としても機能不全に陥っている。こうした状況において、諸外国においては、「雇用契約」そのものの再検討を行い、これまでの従属的関係を基礎とする近代法の雇用契約概念について根本的な構造転換を図り、それを現代の雇用関係に適合的な形に再編成することを企図する理論的検討が本格的になされている。 そこで、本研究では、雇用システムの制度設計において、労働契約概念の 現代化を企図して、より広い契約概念を用いる法的手法に注目し、これを契約概念の「再定義」 の問題として位置づけ、雇用関係にどのような法的保護や法規制を及ぼすべきかについて検討を行う。平成27(2015)年度には、日本における労働契約をめぐる裁判例や文献の分析・研究を行いつつ、イギリス及びEUにおける雇用システムをめぐる環境変化と、これに対応した労働法の展開と雇用契約概念をめぐる理論動向を調査し、歴史的視点から新たな視点を見いだすための情報収集、整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の既存研究の問題状況を調査するとともに、イギリス及びEUの労働法の歴史研究は、予定通り順調に進んでいる。イギリス現地にて、日本では入手困難な文献資料や論文、裁判資料等を収集できたが、今後はその内容を研究していくことになる。日本および欧米諸国の状況が現在も流動的に動いているため、なお確定的な示唆を得られるにはいたっていない。これらの点は、今後研究を発展させていくことによって、十分達成可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28(2016)年度には、イギリスでの調査研究によって得られた資料の分析を進め、イギリスにおける学説上の議論状況を明らかにするとともに、雇用契約概念の再定義をめぐる理論について総合的な研究を行う。 イギリスにおける雇用契約概念をめぐる議論状況は、急速に変化しつつある。雇用契約の歴史的な形成過程との関連も含め、時代背景とともに雇用契約がどのような機能を担ってきたのか、その機能を描き出す。そのうえで、イギリスにおいて学説上争われてきた概念上のいくつかの論点についての整理を試みる。 上記の作業と並行して、国内外で開催される労働法のあり方に関する学会、研究会などに可能なかぎり参加し、情報の発信と収集を行う。 平成29(2017)年度には、新たな理論構築を試みる年度として位置づけられる。これまでの研究を総括しつつ、本研究の成果をとりまとめ公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内の研究会参加を念頭に予算をプールしていたところ、予定の研究会開催が次年度に繰り延べされたために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額を含め、研究計画に基づいて適正に執行する予定ある。
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