研究課題/領域番号 |
15K16935
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
田平 恵 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (70632686)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 問題解消措置 / 企業結合 / 事後的検証 |
研究実績の概要 |
本研究は、企業結合規制における問題解消措置の事後的検証にかかるものである。企業結合を行う際に、競争当局から反競争効果の発生を懸念される場合がある。その際に、企業結合そのものを断念するのではなく、反競争効果除去のための措置を当事会社に課すことで企業結合を実施することがある。この時に課される措置を問題解消措置という。 問題解消措置は、3つの問題に大別することができる。第一に、設計の問題である。懸念された反競争効果に対応した問題解消措置を設計することができるか否かが問題となる。第二に、実行の問題である。確実に問題解消措置を実行することができるか否かが問題となる。第三に、事後的検証の問題である。課された問題解消措置が効果的なものであったか否かが問題となる。 本研究は、日本ではほとんど検討されることのなかった事後的検証の問題に焦点をあてたものである。邦語による文献はほとんどないことから、埼玉大学や他大学所蔵のデータベースを利用し、欧米の論文や判例の収集を行った。また、欧州委員会が事後的評価に関する報告書を2015年12月に公表したことから、内容の整理につとめた。とりわけ、問題解消措置の有効性の分析方法には経済学に基づく手法が用いられていたこと、検討対象となった2つの事例では、企業結合後の価格の変化など異なる結果が生じたことが特徴的な点であった。 文献収集のほか、研究会報告・研究会参加・インタビューを通して、主に欧米の動向の把握につとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、欧米の動向の把握に注力した。第一に、米国における動向の把握として、現在までに競争当局が公表した事後的評価に関する報告書の内容を整理・把握した。 第二に、欧州における動向の把握として、欧州委員会による事後的評価に関する報告書を検討対象とした。当該報告書は、欧州委員会が2015年12月にオーストリアのT-Mobile/tele.ring事例と、オランダのT-Mobile/ Orange事例とを比較し、企業結合によるその後の価格への影響等を検討したものである。当該報告書の内容および意義を整理し、独禁法研究会(2016年2月)にて研究会報告を行ない、参加者との意見交換を行った。 第三に、事後的検証にかかる研究を進めるにあたり、その前提として問題解消措置の設計および実行にかかる実状を把握することも必要であることを強く認識した。そこで、企業結合事例における問題解消措置の設計および実行に関して関係者にインタビューを行った。 以上の進捗は、当初の計画通りであるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究対象となる「素材集め」を中心的に行ったため、今後は、それぞれの報告書や事例が持つ意義を明確にすること、そして、それぞれの位置づけを行うことを予定している。米国と欧州それぞれの特徴を明らかにすることも試みたい。そのうえで、日本法への示唆が可能な点を明らかにしていく。 文献研究で明らかにならない点もあることから、適宜インタビューや意見交換の機会を得て引き続き研究を進めていく。
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