本研究は、企業結合規制における問題解消措置の事後的検証について、日本の企業結合審査の透明性・予見可能性・法的安定性の向上に資する示唆を欧米の議論や競争当局の取り組みから得ることを目的としている。 米国および欧州の競争当局は、積極的に事後検証を行い、結果を公表している。本研究では、それら欧米の事後検証の内容を整理し、公表後の競争当局による審査の動向を把握することにより日本の企業結合規制に応用可能な点を明確にすることに努めた。 本研究により、企業結合の当事会社が、反競争効果除去に適切かつ十分な問題解消措置を提案することが可能となることが期待される。また、有効な問題解消措置を明確化することにより、競争当局にとっては、効率性向上が見込まれる企業結合を適切に審査することが可能となる。これらのことから、企業結合審査の透明性・予見可能性・法的安定性向上が見込まれる。 本年度は、本研究課題の最終年度に当たるため、これまでの研究で得られた成果を公表する作業等について、次のことを行った。第一に、前年度までの研究内容について、日・米・欧州の横断的研究にするべく、各国における事後検証の進捗状況、事後検証の特徴等の整理を行った。本研究によって得られた成果を日本の企業結合規制および企業結合審査に応用可能な形で具体化させる作業を行った。 第二に、今後、事後的検証の対象となりうる日・米・欧州の企業結合事例について、違法判断基準および問題解消措置の妥当性・特徴について検討した。この成果は、研究会報告を経て、公正取引814号、アメリカ法2018年第1号に公表した。
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