研究実績の概要 |
本研究は、国家が事業者らに付与する国家補助について、(1)日本において公的補助(助成金/補助金等)を競争の観点から規律する必要性があるか、あるとすれば(2)公的補助規制の正当化原理はいかなるものか(日本とEU の比較法的検討)を明らかにすることを目的とする。 平成28年度は立法資料・政策文書・EU 裁判所の判例等を素材に、EU において国家補助規制の正当化原理がどのように考えられているか検討し、検討の射程は、国家補助に関するルールを定めるEU 機能条約107 条に関するものとして、現在、EU において国家補助規制がEU の法体系においてどのように位置づけられるか、またEU 域内市場においてどのような役割を果たすかという点について、実務においてどのように考えられているかを明らかにすることを課題としていた。 今年度は、この課題に対して、欧州委員会が公表した国家補助についての政策文書および重要判例の分析を行った。特に国家補助の概念についての実務の考え方の整理を実施し、論文の執筆に着手した。また、平成29年度に実施する研究計画上の課題の先取りとして、欧州の研究者による論文を研究対象として、理論分析を行った。たとえば、A. Avallone & Nicola Pesaresi, EU Competition Law: State Aid (2016), Leigh Hancher & Tom Ottervanger, EU State AIDS (2016), Sanoussi Bilal, Understanding State Aid Policy in the European Community (1999)等を端緒としつつ、その他の研究論文を探索した。理論研究を並行して実施することにより、政策文書および判例の研究が深化したといえる。
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