研究課題/領域番号 |
15K16937
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
早津 裕貴 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (60732261)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 公務員 / 非正規雇用 / 日独比較法研究 |
研究実績の概要 |
非正規雇用は、民間部門のみならず、公務部門においても多くの問題を生じている。本研究は、非正規公務員を題材として、日独公務員法の比較研究を行い、その基本原理と展開を明らかすることによって、労働法と公務員法の「法の狭間」に落ちているともいわれている日本の「臨時・非常勤職員」の理論的課題を解明し、その雇用保障の在り方を検討するものである。 平成27年度においては、日独非正規公務員に関する実態やその法制度の分析を中心に研究を進め、日本型公務員法制とドイツ型公務員法制双方における憲法を頂点とした法体系を踏まえ、それら公務員の「制度」的側面と「労働者」的側面の関係性という観点からの分析を行った。具体的には、日本法については、戦後公務員法体系の展開を踏まえた「一元的」公務員法制の意義とその中での非正規公務員の位置付け・展開を中心に、ドイツ法については、「複線型」公務員法制、とりわけ公法上の官吏と私法上の公務被用者の区分の意義とその中での非正規公務員の位置付け・展開を中心に研究を進め、双方の展開過程の類似性・対照性の明確化を試みた。 研究遂行に際しては、国内での文献研究・調査のほか、2015年7月末から9月下旬までの約2か月間、ドイツ・ボン大学に客員研究員として滞在し、ドイツ法の研究調査および実態解明のためのインタビュー調査を敢行した。 このような研究の中で、「臨時・非常勤職員」の退職手当請求に関する判例を題材とした分析を行い、「地公法における特別職・一般職の区分と『非常勤職員』による退職手当請求」(労働法律旬報1841号48-55頁)として公表したほか、ドイツにおける非正規公務員の実態分析の紹介を「公勤務における非典型雇用関係-それは本当に存在するのか?」(日独労働法協会会報16号41-66頁)において行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内では、ほぼ計画通りに日独双方の文献研究を遂行したほか、研究会報告も実施し、研究者のみならず実務家との意見交換も行った。また、非正規公務員を組織する労働組合などへの聞き取り調査も行っている。 ドイツでの現地調査においては、日本国内の研究者はもとより、ボン大学のヴァルターマン教授やドイツ経済社会科学研究所(WSI)のザイフェルト博士の計らいもあり、ノルトライン・ヴェストファーレン州において、研究者、労働組合、官庁、職員委員会および労働裁判所の裁判官に対するインタビュー調査を実施したほか、フランクフルトにおいて、現在では民営化されているドイツ鉄道の機関士を中心に組織するドイツ機関士組合(GDL)やドイツ最大の産別労働組合である金属産業労組(IG Metall)などへの聞き取り調査も実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、平成27年度と同様に研究計画を遂行し、その中では、公務員の「労働者」的側面を現行法制においていかに把握すべきか、という観点に焦点を絞っていく。また、これまでの研究を踏まえ、集団的労使関係および個別的労使関係双方の観点から、非正規公務員に関する研究成果を随時公表していく予定である。とりわけ、非正規公務員の個別的労使関係に関しては、日独の比較研究を踏まえ、従来の日本における理解を批判的に検討していく。 また、民営化をめぐる議論に関しても、典型的公務員像との関係に焦点を絞りつつ、検討を進める予定である。
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