平成28年度には日独公務員の法制度に関する研究を更に発展させた。 第一に、日本法研究では、現行法の枠組みにおいて公務員法と労働法双方に関連し、「非正規」公務員の増加によって新たな問題を生じさせている境界事例に取り組んだ。その中では、地方公務員における、公務員法の適用がある一般職と公務員法の適用がなく労働関連法規の適用がある特別職の区分や「混合組合」(公務員法の適用下にある者と労働組合法の適用下にある者がともに組織する労働組合)の理論的課題を明らかにした。前者の研究成果として「地方公務員における一般職・特別職の区分と『非常勤職員』への年休に関する虚偽告知を理由とした損害賠償」(日本労働法学会誌129号127-136頁)を、後者の研究成果として「混合組合の法的地位に関する検討」(労働法律旬報1864号18-32頁)、「混合組合と不当労働行為-大阪府・府労委(泉佐野市・チェック・オフ)事件」(判例地方自治417号52-55頁)を公表している。 第二に、ドイツ法研究では、昨年度に取り組んだ公法上の官吏(Beamte)と私法上の公務被用者(Arbeitnehmer im oeffentlichen Dienst)の区分の意義を踏まえ、双方の法制度の基本理念がその法的地位にいかに帰結しているかの解明に取り組んだ。その中では、制度的観点による雇用保障と労働法的観点による雇用保障の異同・相互関係を明らかにし、身分的区分を設けつつも労働法的保障を下限とし、担うべき機能に着目しながら相関的に展開してきた点を捉え、日本の公務員の法的地位の硬直的理解に起因した「非正規」公務員問題へのあるべき対処に関する示唆を得た。現在、これら研究成果の公表を「ドイツ公勤務者の法的地位に関する研究(1)(2)」(名古屋大学法政論集271号1-32頁、同273号・6月発行予定。以後、続刊予定)において随時行っている。
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