本研究は、総合的監視の問題について検討を加えるものであり、取得した情報の将来的利用を念頭においた保存の可否、すでに多種多様な操作を実施したのちの新たな情報の取得の可否を問題とする。このような情報の取得、保管および網羅的結合によって得られる個人の人格プロフィールは、行政警察上も利用されうるものである。当初の研究計画では、行政警察上の強制処分の乏しいわが国においては、刑訴法上の情報取得がその目的達成にも利用されていたのではないかという仮説を立てた上、刑訴法と別個に行政警察上の根拠規定による規制が必要なのではないかとの主張を論証することをめざしていた。そのため、行政警察法上の各種規定が存在するドイツの法制度、議論状況は参考になるものと思われた。ところが、ドイツにおいてこのような日本における自らの問題意識を述べたところ、当地の研究者からむしろドイツでは逆の現象が起きており、判例上問題となっているとの情報提供を受けた。すなわち、行政警察法上の強制処分が、刑事訴追目的で流用されているというのである。というのも、裁判官留保の下で比較的厳格にコントロールされる刑訴法上の強制処分と比べ、行政警察放棄における同種処分(例えば、捜索や差押え)は緩やかな要件の下で実施することが可能であり、時として警察が真の目的は刑事訴追のための証拠獲得にあるにも関わらず、これらの法規を利用した処分を実施しているというのである。そのため、ことはわが国においても行政警察上の受権を認めれば良いというものではなく、その場合の問題性について検討し、紹介しておく必要が明らかになったため、とくに問題が顕在化している偽装検問所の問題について論考を執筆することにした。目下、執筆中であり、近日中に公表する予定である。 その他、おとり捜査、なりすまし捜査について2本の論考を執筆し、公表した。
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