研究課題/領域番号 |
15K16946
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
丸山 泰弘 立正大学, 法学部, 准教授 (60586189)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 刑事法 / ドラッグ・コート / ハーム・リダクション / 薬物政策 / 司法福祉 |
研究実績の概要 |
本研究では、まず①“War on Drugs”政策終焉以降のアメリカにおける薬物政策とドラッグ・コート政策およびアメリカ国内のハーム・リダクション政策について調査および研究を行うことを第1の目標とし、そして、②国際的なハーム・リダクション政策との関係の中で欧州の薬物政策、とくに社会的資源の役割と諸問題について刑事司法に依存しない薬物政策を検討することが第2の目標としている。さらに、③上記①および②を検討することで近年の危険ドラッグ対策のように規制によってのみ対応することの問題点と刑事司法に依存しない日本の薬物政策について検討を行うことを第3の目標としている。 ①の調査を行うためにアナハイムにおいて開催された全米ドラッグ・コート専門家会議(National Association of Drug Court Professionals)に参加し情報収集を行った。②の調査のためにドイツを訪問し、薬物政策を調査するとともにミュンスターで開催されたヨーロッパ犯罪学会において日本の薬物政策について報告を行った。③の調査については、具体的な施設や団体を訪問したわけではないが、一部執行猶予制度が開始されたことに伴った諸問題を検討するために文献収集を行い、学会報告等を行った。 薬物問題については日本の現状を踏まえた実践的学術研究は十分とはいえない。引き続きドラッグ・コートおよびハーム・リダクション政策を採る諸外国の動向や日本の現状を踏まえ、綜合的かつ具体的な薬物対策の提案を目指し研究を進める。本研究は、刑事規制を中心とした薬物政策が目指されるのか、もしくは、ハーム・リダクション政策を中心とした薬物政策が目指されるのか、その薬物政策の意義と諸問題を明らかにすることで、日本の薬物政策の在り方を検討することにある。それは、学際性、実用性、および国際性において特色ある研究であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画においては、以下のように計画を立てていた。すなわち、「第1に全米薬物統制局が発した「施設収容に頼らない薬物政策」がドラッグ・コート政策なのか欧州型のハーム・リダクションなのかを検討することを挙げていることから、まず、毎年開催される全米ドラッグ・コート専門家会議(NADCP)に参加しアメリカ国内の薬物政策の動向を調査する。第2にポルトガルやオランダといったハーム・リダクション先進国での調査を行う。さらに、アメリカ国内での嗜好的使用のマリファナ合法化を行ったワシントン州およびコロラド州を調査訪問する。第3に、日本国内の調査として、ダルク(DARC)の調査が中心となるが、その特色が表れている茨城ダルク(治療共同体としての活動に特化)、三重ダルク(薬物使用の背後にある嗜癖研究に特化)、などへの聞き取り調査を踏まえ、日本での社会的資源の可能性について考察する」という計画である。 これらのうち、過去の2カ年で全米ドラッグ・コート専門家会議への参加、ポルトガルおよびオランダへの訪問調査は行えている。しかし、日本国内での調査については、引き続き文献のみでなく様々な支援団体を訪問し聞き取り調査を行う必要があると思われる。特に、刑の一部執行猶予の対象となる人が現実にダルクなどの支援団体と関わるのが29年度からになるために、29年度においては日本国内を意識した調査が必要であると考える。全国にあるダルクは、同じ「ダルク」という名称であってもその組織運営や特色が異なる。たとえば、三重ダルクは初期の薬物使用に至るまでの嗜癖問題の解決に特化したプログラムを行う特色をもち、さらには地域生活に根差した事業を行っている。本研究では、こういった特色あるダルクを中心に国内調査を行い刑の一部執行猶予がこれらに与える影響を調査していく。
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今後の研究の推進方策 |
上記「研究実績」や「現在までの進捗状況」と内容が重なることになるが、本研究では、まず①“War on Drugs”政策終焉以降のアメリカにおける薬物政策とドラッグ・コート政策およびアメリカ国内のハーム・リダクション政策について調査および研究を行うことを第1の目標とし、そして、②国際的なハーム・リダクション政策との関係の中で欧州の薬物政策、とくに社会的資源の役割と諸問題について刑事司法に依存しない薬物政策を検討することが第2の目標としている。さらに、③上記①および②を検討することで近年の危険ドラッグ対策のように規制によってのみ対応することの問題点と刑事司法に依存しない日本の薬物政策について検討を行うことを第3の目標としている。また、これらのうち、過去の2カ年で全米ドラッグ・コート専門家会議への参加、ポルトガルおよびオランダへの訪問調査は行えている。しかし、日本国内での調査については、引き続き文献のみでなく様々な支援団体を訪問し聞き取り調査を行う必要があると思われる。特に、刑の一部執行猶予の対象となる人が現実にダルクなどの支援団体と関わるのが平成29年度からになるために、平成29年度においては日本国内を意識した調査が必要であると考える。 以上のことから、平成29年度は、これらの研究成果を報告することを中心としながら、日本国内での刑の一部の執行猶予制度の運用実態に目を向けて調査を行う予定である。引き続きドラッグ・コートおよびハーム・リダクション政策を採る諸外国の動向や日本の現状を踏まえ、綜合的かつ具体的な薬物対策の提案を目指し研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた海外での情報提供者への謝礼金等の支出が抑えられたこと、さらに必要文献の購入を見送ったことなどが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度であるために国内外での学会報告を予定している。そのため当初の計画よりも交通費が必要になるために、交通費として使用する予定である。
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