研究課題/領域番号 |
15K16947
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小西 暁和 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (20366983)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 少年非行 / 学校教育 / 少年警察 / 児童福祉 / 少年保護司法 / 少年院 / 児童自立支援施設 |
研究実績の概要 |
本研究では重大な触法少年事件防止のための多機関連携のあり方に関して実証的研究を行っており、第1年度は「①資料の収集」、「②実態調査」、並びに「③検討会の開催」を行った。 「①資料の収集」に関しては、関連する論文や書籍を収集するほか、国立国会図書館等に所蔵されている政府作成の統計資料なども収集し、その資料の整理・分析を行った。 「②実態調査」に関しては、「①資料の収集」で得られた分析結果等も踏まえながら、研究計画調書記載の通り、横浜市児童相談所と神奈川県警察本部生活安全部へ質問紙・聞き取り調査を行った。また、その後の調査研究の進捗により、触法障害児の支援を行っている国立重度知的障害者総合施設のぞみの園、知的障害児の学校教育と入所施設支援を行っている東京都立七生特別支援学校と東京都七生福祉園、並びに、子どもシェルターを運営している社会福祉法人カリヨン子どもセンター、NPO法人子どもセンターてんぽ、及びNPO法人子どもセンター帆希に対しても聞き取り調査等を実施した。 「③検討会の開催」に関しては、上記「①資料の収集」や「②実態調査」を行う毎に研究協力者も交えて実施し、それまでの研究内容を検討するとともに今後の方向性について協議した。 これらを通して、2007年の少年法等の一部改正で新設された、触法少年事件を警察官から児童相談所長へ「送致」する制度はある程度機能し、全国で年間200件程度存在することが判明した一方、「原則送致」を義務付ける一定の重大事件(少年法6条の6第1項1号)は各都道府県で年間1件~数件程度しか存在しないことが分った。また、触法少年の補導人員及び人口比がここ数年減少していると言われているが、その主要因は窃盗と横領事件の減少であって、それらを除いた触法行為では補導人員及び人口比ともに減少しているとまでは言えず、暴行や傷害事件等はむしろ増加傾向であることも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書作成時においては、重大な触法少年事件防止のための多機関連携のあり方を検証すべく、主に札幌市と横浜市の関係機関への実態調査研究を行うことを予定していた。これについて、横浜市の関係機関への調査研究は着手できたものの、その後の調査研究の進捗により、研究計画を修正する事態が生じた。 第一は、障害児に対する調査研究の必要性と、子どもシェルターを運営する団体への調査研究の必要性が浮上したことである。前者については、国立重度知的障害者総合施設のぞみの園、東京都立七生特別支援学校、及び東京都七生福祉園へ、また後者については、社会福祉法人カリヨン子どもセンター、NPO法人子どもセンターてんぽ、及びNPO法人子どもセンター帆希に対して聞き取り調査等を行った。 第二は、重大な触法行為を行い、施設収容処分を受けた少年に関する調査研究の必要性である。「資料の収集」を行うにつれ、全国的に年間一定数の重大な触法少年事件があることが判明したものの、その実態は資料からだけでは解明が難しく、実際に当該少年の処遇を行っている機関へ聞き取り調査等を行う必要が生じた。これについては、「今後の研究の推進方策」に記載のとおり、2016年度に実施する予定である。 このように、ある程度の研究計画の修正を行った一方で、2015年度では日本司法福祉学会第16回全国大会において、研究代表者である小西が子どもシェルターを取り上げた分科会「子どもシェルターの現状と課題-機関・団体連携を視野に-」を企画・コーディネートしたほか、研究協力者である三枝が「触法少年事件における2007(平成19)年少年法等一部改正の影響についての考察」と題した自由研究報告を行うなど、本研究の中間的な成果を社会へ発信することも行なった。これら上記事情により、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している。」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2016年度においては、第1年度の研究実績を踏まえつつ、「①資料の収集」、「②実態調査」、「③検討会の開催」、並びに「④研究成果の取りまとめ」を行うこととし、具体的には以下の通りである。 「①資料の収集」に関しては、第1年度で収集しきれなかった不足箇所を補充するとともに、収集した資料の整理・分析を行う。 「②実態調査」に関しては、第1年度の研究実績を踏まえ、以下二方面から実施する。第一は、重大な触法行為を行い、施設収容処分を受けた事件の調査研究である。これについては、当該少年を収容している少年院や児童自立支援施設などへ質問紙・聞き取り調査を行う。これらの調査を通して、2007年の少年法等の一部改正により、それら施設への収容状況にどのような変化があったのか、また各事件で重大な触法行為が発生するまでに関係機関がどのような関わりを行っていたのかなどを解明する。第二は、多機関連携により、重大な触法行為を未然に防止できた事件の調査研究である。これについては引き続き神奈川県・横浜市の関係機関への調査研究を行うとともに、多くの事件を収集・分析するため、事件が比較的多い東京都等の関係機関への調査研究も行う。それらを通して、どのような多機関連携の仕組みがあったことで、重大な触法行為を防止できたのかを解明していく。 そして、これらを行いながら、適宜、研究協力者にも出席してもらって「③検討会の開催」を行い、それまでの研究内容を検討し、さらに不足箇所があれば補足調査を行う。その上で、2016年度の後半においては、「④研究成果の取りまとめ」を行い、最終的には研究成果報告書にまとめるほか、専門雑誌への論文の投稿などにより、研究成果を社会へ発信していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画調書作成時においては、重大な触法少年事件防止のための多機関連携のあり方を検証すべく、主に札幌市と横浜市の関係機関への実態調査研究を行うことを予定していた。これについて、横浜市の関係機関への調査研究は着手できたものの、その後の調査研究の進捗等により、「現在までの達成度」欄に記載の通り、研究計画を修正する事態が生じた。今回の研究計画の修正により、当初予定していなかった関東圏内の関係機関・団体に対する訪問や招聘しての聞き取り調査を行うことになったが、これらは所属研究機関からも地理的に近郊で、出張費を安価に抑えることができた。その一方、調査研究を保留した札幌市への出張は、所属研究機関からも遠方で、航空機を利用したり宿泊を要することなどが見込まれていた。研究計画の修正により、このような出張費の利用額に差が生じたため、次年度使用額が生じた次第である。
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次年度使用額の使用計画 |
「次年度使用額が生じた理由」及び「今後の研究の推進方策」欄にも記載の通り、研究計画調書作成時に予定していた札幌市の関係機関への調査研究を保留にし、2016年度において所属研究機関からも近郊の関東圏内の関係機関への調査研究を行うことを予定している。具体的には、重大な触法行為を行った少年を収容している少年院や児童自立支援施設のほか、触法事件が比較的多い東京都等の関係機関への調査研究である。 これらの実態調査研究を通じて、各事件で重大な触法行為が発生するまでに関係機関がどのような関わりを行っていたのかや、重大な触法行為をどのように未然に防止しているのかを解明する。そして、それらを踏まえた上で、最終的に本研究の目的である、重大な触法少年事件防止のための多機関連携のあり方を検証していく。
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