研究実績の概要 |
本研究は、友好的な企業買収の場面を対象に、対象会社の経営陣を規律づける仕組みとして考えられる3つの仕組み(①株主の判断を通じた規律づけ、②取締役会・特別委員会を通じた規律づけ、③裁判所の判断を通じた規律づけ)について分析・検討することを目的とする。 本年度は、特に①および③の規律づけの仕組みについて分析を深めた。中でも、市場における対抗的な買収提案が果たしうるさまざまな機能のうち、買収対象会社の真の企業価値を知る手がかりを与えるという機能と当初の買収者に対する買収対象会社の交渉力を高める機能といった2つの機能に着目し、これらの機能が十分に発揮できるような法制度のあり方を提案した(白井正和「対抗的な買収提案の意義と買収対象会社の対応」MARR284号online)。また、MBO等の場面における価格決定のあり方(特に補正の要否に関する論点および手続的な公正さの判断要素に関する論点)について詳細に論じるとともに(白井正和「株式買取請求をめぐる近時の課題」日本取引所金融商品取引法研究11号65頁)、近年の米国における株式買取請求の急増の重要な要因となっているAppraisal Arbitrageと呼ばれる現象を紹介した上で、その評価に関して簡潔に論じた(白井正和「Appraisal Arbitrageとその評価を巡る議論」金融・商事判例1553号1頁)。以上に加えて、約1000頁からなる日本の金融商品取引法の英語での体系書を共著で出版し、具体的には公開買付規制と大量保有報告規制について執筆をした(Hiroyuki Kansaku =Yoko Manzawa =Sadakazu Osaki =Masakazu Shirai =Masao Yanaga, Japanese Financial Instruments and Exchange Law (Zaikeishohosha))。
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