平成30年度は研究期間延長後の最終年度ということもあり、最終的な成果公表の前提として、残された課題の検討をしつつ、これまでの研究内容の整理と補充とを行なった。中心的な成果は以下の通りである。 本研究課題の目的たる「物的担保制度における過剰」ひいては「担保制度全体に係る過剰」を規律する法理の模索にあたっては、危険防止義務(警告義務)が最適との仮定を元に、引き続きその要件および効果の検討を行なった。この点、わが国では平成29年の民法改正によって保証人保護に係る多数の規律が新設されたことが注目される。すなわち、ここから上位概念としての一般的な保証人保護義務を導出しうる可能性と、債権者らの保証人に対する情報提供義務に係る規定から危険防止義務への接合可能性とを模索しうる。もっとも、これらはなお保証人に限った視点に止まらざるを得ず、仮に、この可能性を具体化できるとしても、ここから物的担保制度への規律の拡張をなすには、なおハードルがあることは否めない。 このハードルの最大のものは、従前より指摘している物的担保の限定責任性であり、この状況は上記危険防止義務の原点であり、保証人や消費者らの手厚い保護で知られるフランス法においてもなお変わりがないといえるし、担保制度全体につき「過剰」への意識が低いわが国においてはなおさらである。しかし、このように物的担保法制自体からのアプローチが難しいからこそ、危険防止義務といった債権法的(または倒産処理法制的)なアプローチが必要となる。 関連して、平成29年度内に新たに意識された「強行法と任意法」という視点から検討結果を公表し、また、担保法制において民法典内に原初的に認められる数少ない「義務」である担保保存義務についても再度目を向け、特約との関係を考察した成果を公表した。 以上をまとめた最終結果を論文ないし書籍の形で平成31年度中に公表する予定である。
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