本研究は、会社法上の役員の地位・責任に係る規律と適合し、当該規律を適切にエンフォースできる、あるべき会社役員賠償責任保険の商品構成の提案を行うことを目的とする。 以上の研究目的の達成に向けて、最終年度である平成30年度においては、第一に、日本法における会社役員の地位・責任および会社役員責任保険をめぐる議論を継続的にフォローした。特に平成26年以降の会社法改正やコーポレートガバナンス・コードの制定を含む一連のコーポレート・ガバナンス改革の内容・影響について検討した。第二に、ドイツ法の会社役員賠償責任保険に関する議論の調査・分析を行った。第三に、これまでの研究成果を総合的に整理し、分析を行った。 以上の検討過程において、1)平成30年6月に、The Institute for Global Law and Policy at Harvard Law School主催のカンファレンスにおいて、日本法における近年のコーポレート・ガバナンス改革における取締役の役割の変化について研究報告を行った。2)平成30年7月に、University of Chicago Law Schoolで開催されたSummer Institute for Law and Economics 2018に参加し、特に日本法における会社役員の地位・責任について、米国を始めとする各国法制との比較法的見地から、シカゴ大学の教員および他の参加者との議論を行った。これらの報告・議論を経て、日本法の特色・独自性をより明確にすることができた。
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