本研究では、フランス会社法上の基本概念とされる「会社の利益」の原点は、20世紀初頭に提唱された「制度理論」にあり、「制度理論」が前提とする大規模株式会社の特徴をフランスの上場規制の検討を通じて明らかにした。「会社の利益」を会社の構成員の利益とするか、それとも法人の利益とするかをめぐる論争は現在も決着を見ないものの、そうした理念上の論争とは別個に「会社の利益」が判例法上の重要な概念として大きく発展した経緯を示し、会社の存続の確保のために用いられることを指摘した。また、近時のコーポレートガバナンス議論における「会社の利益」概念について、コーポレートガバナンス・コードを中心とした検討を行った。
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