【最終年度に実施した研究の成果】 今年度は、オーストリアの成年者保護法(2018年施行)の内容を明らかにし、公刊および研究発表を行った(「代理から援助へーオーストリアの法改正からの一考察(1)」桐蔭法学26(1)、「代理から援助へーオーストリア法改正からの一考察(2)」同26(2)、「援助から代理へ-オーストリア成年者保護法からの一考察―」桐蔭法学研究会)。内容は、国連障害者権利条約の批准を受けた法改正の内容の検討である。日本も同様の問題を抱えており、検討内容は、日本法への示唆を示す意義を有すると考える。また、2020年2月に、インスブルック大学(オーストリア)に研究出張を行った。同大学で開催された国際会議「オーストリアとドイツにおける国連障害者権利条約の実現」に参加し、改正法施行後のオーストリアおよびドイツが有する問題意識を把握するとともに、資料収集を行い、研究を発展させる基盤を得た。 【研究期間全体を通じて実施した研究の成果】 研究から①成年後見制度利用要件として、他の制度では本人保護が実現できないことが要求されている点、②成年後見制度以外にも、複数の成年者保護制度が設立され、本人への制限の程度が低い保護方法が拡充されている点、③障害者権利条約の批准を受けて、成年後見制度の改正が実施さている点が明らかとなり、成年後見制度の補充的な利用、および行為能力の画一的かつ自動的制限の撤廃を提言することができた。
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