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2016 年度 実施状況報告書

「事業者」概念からみた「消費者」概念の再定義

研究課題

研究課題/領域番号 15K16973
研究機関京都大学

研究代表者

カライスコス アントニオス  京都大学, 法学研究科, 准教授 (60453982)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード消費者法 / 消費者契約 / EU私法 / EU消費者法 / 不公正取引 / 広告規制 / 消費者概念 / 事業者概念
研究実績の概要

本研究では、「事業者」概念の明確化を通じて、「消費者」概念を再定義することを目的としている。前年度は、主として事業者と消費者との間の契約(消費者契約)に関する規律の動向や問題点を整理することに努めたが、本年度(平成28年度)は、この作業を、その範囲を広めつつ、各論的な領域にも焦点を当てる形で継続した。
具体的には、前年度から行っていた、主にヨーロッパ諸国における、特に消費者に対する事業者の不招請取引(電話勧誘および訪問勧誘)の規制に関する検討を継続し、それぞれの国における現行の制度等を紹介した上で、日本での規律との比較を含めた総合的な成果を英語論文として公表した。また、同じく前年度に開始したものであるイギリスの消費者権利法に関する分析を続け、消費者契約との関係で新たな展開がみられるデジタル・コンテンツ供給契約に焦点を当てて、同法の関連部分の翻訳を行った。さらに、消費者契約に関連する重要な側面の1つである広告規制の在り方について前年度からの作業を継続し、論文を執筆した。
本年度新たに研究の対象としたのは、主に、金融・投資取引において消費者と事業者との関係を規律する適合性原則であり、これに関する判例評釈を執筆した。また、イギリスのEU離脱(Brexit)が本研究の比較法的考察の中心としているEU法(私法・消費者法)に与える影響に関するドイツ語原稿の翻訳を通じて、本研究対象の今後の展開等に対する理解を深めるための情報を把握した。
比較法的考察の主な対象がEU法であることから、今年度も、本研究対象に関する最新の情報を入手し、意見交換を行うために、ヨーロッパ法研究所(ELI)の年次総会に参加し、ウィーン大学でのシンポジウムに参加したほか、EU消費者法がアジア消費者法に与えている影響を分析するためにマレーシア国立大学を訪れ、その際に、日本の消費者法の紹介も行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記の研究実績の概要にも記したとおり、消費者契約の規律やこれに関する様々な側面についての成果を順次公表しており、本研究課題は、おおむね順調に進展している。
より具体的には、特にEU法を比較法的考察の対象としつつ、これにおける現状や展開を把握し、事業者と消費者との間の契約(消費者契約)のいくつかの側面について、範囲を広めると同時に各論的な部分にも焦点を当てて、一定程度の検討を加えることができた。
また、本年度も、海外で資料収集を行い、学会等に参加することで、最新の情報の入手や意見交換ができ、引き続きネットワークを固められたことは、最終年度における研究課題の遂行においても大きな重要性を持つことになると感じている。なお、外国法等に関する資料収集やその分析にとどまらず、日本法の状況やこれとの比較から得られる示唆等についても、論文や報告の形で発信できたことにも意義があった。
以上のことから、平成27年度の達成度については、おおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

今年度も引き続き文献調査を行う予定である。そのため、書籍、旅費、PCソフト等の購入や国内外の研究者と連絡を取るための通信費については、前年度(平成28年度)と同様である。本年度は本研究課題の最終年度となることから、事業者概念および消費者概念に密接に関連する消費者契約や事業者間契約に関連する研究も継続しつつ、これらの概念についてより直接的に分析・検討を行うことを試みるために、これらに関する書籍等を購入する予定である。
また、最終年度においても国内外の研究者と連絡をとりつつ、資料収集や研究者との面談等を行うことで最新の情報を得たり、意見交換を通じて研究対象等の調整をしたりするために、国内外の出張を予定している。海外出張としては主にドイツ・ハンブルクのマックスプランク外国私法及び国際私法研究所での資料収集やヨーロッパ法研究所(ELI)の年次総会への参加を計画しているが、その際には、前の2年度で構築したネットワークを最大限に活用したい。
さらに、調査・研究の成果を公表するために、引き続き論文等を執筆し、紀要等に順次投稿する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (12件) (うち謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] ドイツにおける不招請勧誘規制の在り方―判例および実務上の対応を中心に―2017

    • 著者名/発表者名
      カライスコス アントニオス
    • 雑誌名

      消費者法ニュース

      巻: 110 ページ: 202-206

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Regulation of Unrequested Solicitation in Japan: The Way Toward a Do-Not-Call and Do-Not-Knock System?2017

    • 著者名/発表者名
      Antonios KARAISKOS
    • 雑誌名

      Kansai University Review of Law and Politics

      巻: 38 ページ: 21-48

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] ヨーロッパの広告規制㉔ ルクセンブルク(1)2017

    • 著者名/発表者名
      カライスコス アントニオス
    • 雑誌名

      REPORT JARO

      巻: 506 ページ: 18-19

  • [雑誌論文] 後見開始決定取消しの審判から2ヵ月経過していない女性高齢者に対する投資信託やEB債等の勧誘・販売に関する、適合性原則違反、説明義務違反等による不法行為の成立(積極)(大阪高判平成25・2・22)2017

    • 著者名/発表者名
      カライスコス アントニオス
    • 雑誌名

      金融・商事判例

      巻: 1511 ページ: 76-79

  • [雑誌論文] 仕組債の勧誘・販売における適合性の原則違反・説明義務違反(消極)(広島高判平成23・11・25)2017

    • 著者名/発表者名
      カライスコス アントニオス
    • 雑誌名

      金融・商事判例

      巻: 1511 ページ: 84-87

  • [雑誌論文] ルクセンブルクのDo-Not-Knock制度2016

    • 著者名/発表者名
      カライスコス・アントニオス
    • 雑誌名

      ウェブ版国民生活

      巻: 47 ページ: 18-19

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] フランスの新たなDo-Not-Call制度が始動2016

    • 著者名/発表者名
      カライスコス・アントニオス
    • 雑誌名

      ウェブ版国民生活

      巻: 48 ページ: 19

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ルクセンブルクにおける訪問販売の規制―訪問販売お断りステッカーを中心に2016

    • 著者名/発表者名
      カライスコス・アントニオス
    • 雑誌名

      中田邦博=鹿野菜穂子『消費者法の現代化と集団的権利保護』

      巻: なし ページ: 351-357

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] ヨーロッパの広告規制⑬ ギリシャ(2)2016

    • 著者名/発表者名
      カライスコス・アントニオス
    • 雑誌名

      REPORT JARO

      巻: 495 ページ: 18-19

  • [雑誌論文] ギリシャにおける広告規制2016

    • 著者名/発表者名
      カライスコス・アントニオス
    • 雑誌名

      現代消費者法

      巻: 32 ページ: 76-81

  • [雑誌論文] イギリスの2015年消費者権利法―デジタル・コンテンツ関連部分の概説と翻訳―2016

    • 著者名/発表者名
      カライスコス・アントニオス
    • 雑誌名

      消費者法研究

      巻: 1 ページ: 107-123

  • [雑誌論文] イギリスのEU離脱(Brexit)と私法・経済法2016

    • 著者名/発表者名
      ユルゲン・バーゼドー著(カライスコス アントニオス訳)
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 743 ページ: 6-9

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公開日: 2018-01-16  

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