研究課題/領域番号 |
15K16979
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
白川 俊介 関西学院大学, 総合政策学部, 講師 (50737690)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リベラル・ナショナリズム / デモクラシー / 公共精神 / 信頼 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究実施計画(a)「リベラル・ナショナリズム論とグローバルな民主主義との両立可能性についての研究」について、「新自由主義的世界におけるナショナリティの規範的重要性の再評価に関する若干の考察」および、「リベラル・デモクラシーと公共精神──規範的一考察──」という2つの研究報告を行った。両報告とも、リベラル・デモクラシーとナショナリティの規範的な関係性について論じたものであるが、前者は、新自由主義的なグローバリゼーションとのかかわりについて、後者は、より抽象的にリベラル・デモクラシーの理念とのかかわりに、それぞれ力点を置いたものである。また、研究実施計画(a)に関連する問題として、デモクラシーの危機やポピュリズムの問題をとりあげて、"A Crisis of Representative Democracy and Rise of Democratic Social Movements in Recent Japan: A Normative Analysis on Abe Politics"という研究報告も行った。これは、世界的にみて、SNSを介するかたちでいわゆる「直接民主主義」の契機が広がりを見せ、同時に、それが示すかっこつきの「民意」と「代議制民主主義」の乖離がより鮮明に意識されるようになってきた現状について、リベラル・ナショナリズムの理論から規範的にどのように分析できるのか、現代日本の状況を事例に試論的に述べたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度より専任教員として着任したため、講義の準備その他に大きく時間を割かれ、結果的に本研究の遂行のために割く時間的余裕をなかなか作り出すことができなかったというのが大きな理由である。したがって、研究実施計画(a)「リベラル・ナショナリズム論とグローバルな民主主義との両立可能性についての研究」について、平成27年度に遂行した研究をひきつづき遂行することはある程度はできた反面、研究計画上、平成28年度に本格的に着手する予定であった研究実施計画(b)「リベラル・ナショナリズム論から導出されるグローバルな正義の構想についての研究」に関する研究についてはほとんど進められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、研究実施計画(b)「リベラル・ナショナリズム論から導出されるグローバルな正義の構想についての研究」に関する研究に本格的に着手したい。具体的には、グローバルな正義を動機づける「感性」とはいかなるものかを特定し、明らかにするために、リベラル・ナショナリストのネイション概念およびそれと正義構想との関係について、改めて精読し、ナショナルな情緒的紐帯の意義を再解釈するとともに、いわゆる「ケアの倫理」の観点からグローバルな正義について論じた文献(たとえばV・ヘルド著『ケアの倫理』(The Ethics of Care)や岡野八代著『フェミニズムの政治学』)や、ジュディス・シュクラーやリチャード・ローティのいう「残酷さの回避」あるいは「共通悪」などの知見も参照しつつ、そうした議論とナショナリティを重視する議論の接点を探りつつ、議論を構築したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果報告に記載したように、研究計画および研究遂行状況に遅れが生じたため、今年度の支出が予定を下回ってしまったため
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次年度使用額の使用計画 |
繰越計上額(200千円程度)は、図書費(150千円程度)、英文校閲費(50千円程度)として支出し、今年度の研究遂行に充てたい。
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