研究課題/領域番号 |
15K16984
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
松井 孝太 杏林大学, 総合政策学部, 講師 (70733773)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アメリカ政治 / 州政治 / 政党 / 労働組合 / 利益団体 |
研究実績の概要 |
今年度は、米国の州レベルの公共部門労働者の組織化と脱組織化について、関連研究の文献調査を引き続き実施するとともに、平成27年度に学会報告論文や研究会報告等に対して得られたフィードバックを基に、議論の修正や追加的な分析の作業を進めた。また、本研究課題に密接に関連して平成28年度に生じた時事問題や法的な課題に焦点を当てた研究も実施した。今年度の補助金は、主として上記研究対象に関連する文献等の購入費と、国内外の学会への参加費用に充てられた。 今年度実施した研究では、以下の成果が得られた。第一に、近年の合衆国最高裁判所において、公共部門労働者の法的権利に関して従来維持されてきた法的解釈に変更の兆しが見られることが明らかになった。第二に、公共部門労働組合の縮減が近年進んだ複数の州が、今年度11月の大統領選挙の結果にも実質的な影響を与えたことが明らかになった。これらの点は、今年度11月に実施された各種選挙(大統領・連邦議会・州知事・州議会)の結果、直接的ないし間接的(最高裁判所の構成変化による法的解釈の変更)、今後さらに公共部門労働組合の組織環境を悪化させる可能性も示唆するものであり、政府党派性の重要性に着目する本研究の意義であると考えられる。第三に、米国の労働組合及び労働者の経済的利益の保護において重要な役割を果たしている従業員退職保障法(ERISA法)をめぐる最近の状況について検討を加えた。公共部門労働組合の組織化と脱組織化をめぐる政治的対立においても、退職年金に関する交渉権が重要な争点になっており、民間部門と公共部門の比較を通した本研究の深化・一般化という意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度4月に、本研究計画の作成時に予期されていなかった所属・身分の変更が生じた関係で、本研究課題の進捗には全般的にやや遅れが生じている。分析枠組についての論文執筆と、量的データを用いた計量分析に関しては、昨年度に引き続きおおむね順調に進展し、研究会等において成果報告を行うことができたが、学術誌への掲載には至らなかった。米国での実地調査と一次資料を用いた質的事例分析に関しても遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまでの調査によって得られた州政府や公共部門労働組合の内部資料等の一次資料に関してさらに重点的に質的な分析を進めるとともに、これまでに実施してきた、州レベルでの政策的バリエーションの要因や帰結に関する量的データの分析について、データの更新や見直しと分析手法の改善を試みる。その上で、現時点までに執筆作業がある程度終了している論文の修正と学術誌への投稿を行う。当初計画から遅れが生じている部分について平成29年度中の復帰を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、まず、現地調査を行う必要がないことが明らかになった資料について可能な限り国内での調査を進めたことや、既に収集していた一次資料の分析に遅れが生じたため、米国での実地調査が計画よりも少なくなったことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
発生した次年度使用額の使用計画としては、研究図書の購入を行うこと、学会への参加のための旅費に使用すること、実地調査を実施することなどを計画している。
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