本研究は、ポルトガルのサラザール体制(1932‐74年)前半期の政治的動態を、実証的政治史の手法を用いて明らかにしたものである。サラザール体制は同時代のヨーロッパの非民主主義体制と異なり、国民の直接選挙によって選出される共和国大統領(国家元首)が政治的に有意な存在であった(実質的な支配権は首相であるサラザールが有したが)。 本研究はこのようなサラザール体制を「立憲的独裁」と規定した上で、同体制の政治的動態を、大統領選挙に着目することで解明した。ポルトガル本国の一次史料を幅広く渉猟してサラザール体制前半期の政治史を扱った本研究は、日本はもとより世界的に見ても先駆的といえよう。
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