本研究は、民主主義諸国に生じる専制としての「行政の専制」の構造を理論と実例の両面から分析した。具体的には、フランス第二帝政下で書かれたアレクシ・ド・トクヴィルの『アンシャン・レジームと革命』(1856年)とその草稿を分析するとともに、ナポレオン3世の政策とその理念を考察した。 その成果として、民主的な権力の集中が生じるのは、政治制度(大統領制)や行政組織(官僚制)と同時に、あるいはそれ以上に、経済状況とその政策によるところが大きいことを明らかにした。特に、それが従来言われてきたような財政出動型ではなく(あるいはそれと両立するかたちで)経済自由型になりうることを理論的・実証的に解明した。
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