本研究は,申請者の選挙制度・政党組織・議会における政策過程に関する研究成果と,政治制度における近来の学術的発展を踏まえ,政治的マイノリティ(特に女性)の代表性を促進・阻害する制度的要因を探求し,マイノリティの政治参加がもたらす政策的帰結について明らかにする.申請者は,既存研究とは一線を画し,新たに選挙競争の質に着目し,(1)政党本位・政策志向の選挙競争が行われている国であるほど,政党は多様な有権者の声を代表するようになる,(2)クライエンタリズムの強い国であるほど,候補には地元選挙区や特定の利益団体に便益をもたらすような能力が求められる,との作業仮説を立てる.この作業仮説から得られる様々な副次的仮説を,叙述的代表性と実質的代表性という二つの側面から,(1)国際比較データと(2)日本・韓国の事例研究を元に多面的に実証する. 本研究の作業仮説を検証するに当たり,各国の候補・議員に関するオリジナルのデータセットが必要である.2017年度は,前年度までの継続として,RAの雇用や,研究協力者の支援を得て,申請者の有するデータセットを拡張することができた.さらに,新たにニュージーランドにおける選挙・国会議員のデータセットを作成した.2017年度は,これらのデータを利用し,EPSA(ヨーロッパ政治学会)において発表を行い,有益なコメントを得ることができた.これを踏まえ,論文に加筆修正を行い,投稿を行う予定である.
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