本研究の目的は、維新の会に対する有権者の支持態度について、実証的に明らかにすることである。そのためのアプローチとして本研究が用いたのは、意識調査を用いた実証分析、とりわけ意識調査に実験的手法を融合させたサーベイ実験という手法である。この新たな政治学における方法を用いることなどによって、維新の会への支持態度に関する、多くの知見を本研究では明らかにすることができた。 既に公表済みである2つの研究成果に限定し、本研究の知見の一部を具体的に説明する。まず、本研究では、特別区設置住民投票下の投票行動の分析を通じて、都構想が否決された理由を実証的に明らかにした。通説的見解であるポピュリズムに基づく説明や、シルバーデモクラシー論に対して、本研究が主張するのは、有権者の批判的志向性に関する重要性である。この態度を大阪市民は潜在的に有していたことが、賛成への投票を踏みとどまらせた原因であることを、本研究は意識調査を用いた実証分析によって明らかにした。 さらに本研究では維新が、橋下氏が政界を引退して以降も関西圏を中心に支持を集め、選挙で勝利し続ける原因についても明らかにした。他党と比較した場合の維新の特徴として指摘できるのは、地域偏重性である。これにより維新は、全国的にはほとんど支持を獲得できない一方で、関西圏に限定する形で、多数の有権者の支持を獲得することに成功した。しかしこの仮説の妥当性は、観測データを用いた分析からは社会的期待迎合バイアスがあるために検証できないという問題を抱える。そこで本研究では、無作為化要因実験という、社会的期待迎合バイアスを除去することが可能な方法で、維新支持態度の規定要因を分析した。その結果、維新に存在する「大阪」偏重的な要素が、支持の理由の1つであることが明らかとなった。
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