研究課題/領域番号 |
15K16996
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
大村 華子 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (90612383)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経済投票 / 業績投票 / 経済評価 / アカウンタビリティ / サーヴェイ実験 / 所得格差 / 再分配政策 |
研究実績の概要 |
本年度はインターネットを用いたサーヴェイ実験の本調査として、「経済評価とアカウンタビリティに関する意識調査」を実施した。調査に際しては、Qualtrics社のリソースを用いて調査画面を作成し、調査パネルを日経リサーチ社に委託した。約3500人の回答者から得られたデータをもとに分析を進め、現段階で2本の研究論文をまとめた。 第1の論文は、有権者が所得格差に関する刺激を付与されることで、どのような再分配を求めるようになるのか、そしてそのもとで政府に対する支持がどのように異なるのかを検証するものである。分析の結果、再分配の選好に関して、(i)中所得層の回答者が所得格差に関する刺激を受けた場合に、低所得層に対してさらなる課税と再分配の抑制を望むこと、(ii)低所得層の回答者は、格差に関する刺激を受けた場合にも、自身の階層の所得税率を抑制することを望まず、他の所得層に対して高い課税を求めないこと、(iii)高所得層に対して、高所得層の回答者を含むすべての所得層の回答者が税率の上昇を求めないことが明らかになった。そして政府への支持については、中所得層が格差への刺激を付与された場合に政府に対する支持が変化するが、その他の所得層ではその傾向が認められないことが明らかになった。 更に第二の論文では、追加的な調査として「経済評価に関する指標の妥当性を検証するための調査」を行ったものをもとに、従来の経済評価の設問を改善することによって、経済評価が政府への指示に与える効果が過大に評価されている可能性が明らかになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、第1の論文については、成果を2016年度日本政治学会研究大会・総会にて報告し、まとめた英語論文を海外の査読誌に投稿中である。最初に投稿した査読誌においては不採択であったが、現在は異なる査読誌に投稿している段階である。 また第2の論文については、成果を2017年3月7日に「政治学会年報委員会3月会議」において報告した。同論文は、2017年7月末に締め切りの『年報政治学2017-II』において、特集論文として掲載される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
第1の論文については、査読の結果を待ち、不採択の場合には新たに査読誌に投稿する作業を継続する。 また現在、経済投票についての研究動向をまとめたレヴュー論文を執筆している。この論文では、ただ研究動向を整理するばかりではなく、研究動向の整理から必要と思われる新たな分析について試論的な分析結果も紹介することを目的にしている。その際のデータとして、2016年度に実施した2つのサーヴェイ実験のものを利用する。そして本論文は、日本の査読誌に投稿する予定である。 続いて、本年度には経済政策の実行状況に関する評価を、有権者がどの程度正確に行っているのか、という有権者の認知の問題ついて、新たな調査を実施することを予定している。その調査の結果を英語論文としてまとめ、海外の査読誌に投稿する。 また、これまでに蓄積してきた経済投票をめぐるいくつかの論文の知見を書籍としてまとめる作業に取りかかることも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年3月の段階で3冊程度の書籍の購入を予定していものの、それらの洋書のうち2冊は発刊時期が遅延し、1冊については当該時点での購入の必要性が認められなくなったことにより購入を延期した。結果として、次年度への繰り越し額が生じることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額分として繰り越されたものについては、新しい分析手法の導入を計画していることから、その手法を習得するための書籍の購入に充当する予定である。
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