本研究では、内戦を通じた一般市民のアイデンティティの形成・変容に関する理論的考察及び実証分析を行った。特に、なぜ、ある内戦では市民の国家に対する帰属意識が希薄化し、民族などの政治社会集団に対するアイデンティティが強まる一方で、他の内戦事例で はこうしたアイデンティティの顕在化がみられないのかという問題を、1)内戦中の市民の経験 や2)反乱軍による領域統治の両側面から説明することを試みた。この目的のため、スリランカ北・東部地域、インドネシア・アチェ州、パキスタン・連邦直轄部族地域において質問票調査を実施し、民軍関係に関する体系的なデータの収集・分析を行った。
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