研究課題/領域番号 |
15K17004
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
杜崎 群傑 中央大学, 経済学部, 助教 (30631501)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 中国共産党 / 政治協商会議 / 人民代表会議 / 人民代表大会 |
研究実績の概要 |
本研究は、1950年代の中国における「立法‐司法‐行政」のうち、中国共産党によって正統性調達と権威主義体制構築に利用されてきた立法権=人民代表大会に着目し、一次史料と政治学理論の双方を用い、さらに国際的要因も含めて検討することにより、これまでほとんど明らかにされなかった、当時の中国における三権分立と党の関係、これによって導き出される政治体制と、共産党による「党国体制」=独裁化の実態、およびそのための具体的手段を、人民代表大会の開催過程から検討するものである。その際、1940年代に構築された政治体制と比較することにより、1950年代の体制の特質を明らかにするものである。 本研究は主に一次史料の収集・整理と、政治学理論と先行研究の精読が中心となることが予定されていた。そこで本年度は、①中国語の新聞・雑誌記事と一次・二次史料の翻訳・整理・解析作業を行った。またこれと同時並行で、②先行研究や政治学理論に関する文献・研究を熟読し、先行研究の整理と問題点の洗い出し、さらに政治学理論の緻密化を行った。さらに、③1940年代の政治体制の特質を明らかにした専門書を刊行した。 ①については、すでに入手済みの一次・二次資料を整理しデータベース化を進めている。また、国内外の資料所蔵状況を網羅し、すでに資料の収集に着手し始めた。②については、特に全体主義・権威主義・民主主義体制に関する理論の緻密化を行っている。また中国研究に関する先行研究の精読も進めている。③については、目に見えた成果として『中国共産党による「人民代表会議」制度の創成と政治過程: 権力と正統性をめぐって』(御茶の水書房、2016年)(研究成果公開促進費・学術図書・課題番号15HP5134)を刊行できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国の档案資料に関する環境は近年悪化の一途を辿っている。特に本研究との関連で言えば、中華人民共和国外交部档案の公開制限に引き続き、地方档案館も資料調査が困難になっているという情報を得ている。とはいえ、これらは必ずしも悲観する状況ではなく、国内や中国近郊の地域に所蔵する資料、さらには中国ですでに公刊されている資料を解析しつつ、政治学理論を応用しながら検証を行うことは十分に可能である。その中で、中央档案館・中共中央文献研究室編『中共中央文件選集 1949年10月―1966年5月』全50巻(人民出版社、2013年)が今年度に入手出来たことは重要な成果である。その他にも、台湾の国立政治大学国際研究センターが所蔵する、国民党による大陸の政治制度を分析した資料を収集できたことも大きな成果の1つであろう。その他、申請者の研究対象とする河北省について、申請者の研究ネットワークにより、いつでも『河北日報』にアクセスする体制を整え、また石家荘市についても現在『石家荘日報』のマイクロフィルムもしくはデジタルデータを請求中である。なお、政治学理論に関する文献の収集と講読は計画よりも順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
上述のように昨今の政治情勢の中、資料収集に関する制約は大きいが、幸いなことに、本年度までに筆者が収集してきた一次資料、上記ネットワークを活用した新聞資料、その他『中共中央文件選集』や主要人物の伝記・回想録などの刊行資料がある。今後はこれらを駆使しつつ、政治学理論あるいは上記の申請者の研究の中で得られたアプローチ方法を応用し、実証的に研究を進めていく。その際、中国の周辺地域からみた政治体制(日本・台湾・香港・米国など)にも所蔵状況に応じて随時調査を進めていく。これにより、周辺地域から見た中国像という視点も可能となっていくであろう。
|