本研究は、1950年代の中国における「立法‐司法‐行政」のうち、中国共産党によって正統性調達と権威主義体制構築に利用されて きた立法権=人民代表大会に着目し、一次史料と政治学理論の双方を用い、さらに国際的要因も含めて検討することにより、これまで明らかにされなかった、当時の中国における三権分立と党の関係、これによって導き出される政治体制と、共産党による「党 国体制」=独裁化の実態、およびそのための具体的手段を、人民代表大会の開催過程から検討するものである。その際、1940年代に構 築された政治体制と比較することにより、1950年代の体制の特質を明らかにしようとした。 本研究は主に一次史料の収集・整理と、政治学理論と先行研究の精読が中心となることが予定されていた。そこで平成29年度は、①昨年度に引き続き関連資料の収集・整理・解析作業、②先行研究の整理と問題点の洗い出し、③以上をまとめた論考の刊行を行う予定であった。①に関しては、1954年に制定された憲法の制定過程に関する資料、およびその憲法の草案を入手し、解析作業を進めた。特に憲法草案から最終的に可決された憲法に至るまで、どのような変更点があったのか、そこにおける中国共産党の意志について分析している。また、①に関してはその他に、デジタル版の『人民日報』と市レベルの『石家荘日報』を入手しており、順次解析していく予定である。②に関しては、昨年に引き続き比較政治学に関連する文献、中国との比較対象として重要である中東その他いわゆる選挙権威主義体制と言われる国の研究、現代政治中国研究 に関する先行研究を熟読し、政治学理論の緻密化を行った。 ③については平成29年度にはかなわなかたっが、①・②をまとめた論考を近々刊行する予定である。
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