研究課題/領域番号 |
15K17005
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
浜井 和史 帝京大学, 総合教育センター, 講師 (20614530)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遺骨収集 / 戦没者慰霊 / 復員 / 引揚げ / 戦後処理 |
研究実績の概要 |
研究開始年度となる本年度においては、おもに国内における史料収集を集中的に行なった。具体的には、外務省外交史料館所蔵の関連史料を網羅的に収集したほか、国立公文書館、防衛省防衛研究所戦史研究センター、国会図書館憲政資料室などの史料調査を行なった。また、環境省や宮内庁、厚生労働省へ情報公開の開示請求を行なった。これらの成果は、『歴史問題ハンドブック』(岩波書店、2015年6月)における「復員・引揚げ(留用・残留日本人・遺骨収集を含む)」の項の執筆や、「『英霊の凱旋』から『空の遺骨箱』へ―遺骨帰還をめぐる記憶の形成―」(『軍事史学』第51巻第2号、2015年9月)の執筆に大いに活かされた。海外の史料に関しては、米国や英国、オーストラリアの公文書館等が所蔵する史料についてFinding Aidや各種の検索等を通じて所在調査を行なうとともに、国内で入手可能なものについて調査・収集を行なった。フィールドワークに関しては、戦後における戦没者の遺骨処理の事例として重要な長崎県佐世保の釜墓地における慰霊祭の調査を行なったほか、地域における戦没者慰霊研究として青梅市の慰霊碑・慰霊祭の調査を行なった。その一環として、青梅市において海外戦没者の遺骨収容に関する講演を行なった。また海外調査として、従来ほとんど知られていなかった台湾における遺骨処理の事例を明らかにするために、台北・台中・高雄の日本人遺骨安置所の現状調査を行なうとともに、現地での聞き取り調査を行なった。その成果は、2015年12月に台北の中央研究院で開催された日中戦争に関する国際共同研究台北会議で報告した。2016年3月に戦後初の遺骨収集促進法が成立し、本研究の社会的意義がますます高まるなかで、本年度は次年度以降の研究の基盤を築くことができたと評価できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内における史料収集については、主要な文書館への訪問調査や情報公開法に基づく開示請求などにより順調に史料を入手することができた。海外における史料調査については、米国や英国、オーストラリアの関連史料は国内で入手可能なものも存在するため、本年度はそれらの状況把握に努め、実際の調査は本年度の調査を踏まえて次年度に行なうこととした。ほかに、遺族会や遺骨収集関連団体からの聞き取り調査を行ない、その過程で重要な史料を入手することができた。現地フィールドワークに関しては、日中戦争に関する国際共同研究への参加が決まったため、調査地を台湾とすることになったが、同地は本研究課題にとって重要なフィールドであり、十分な成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において国内における史料収集を集中的に行なったが、まだ十分ではないため、引き続き史料調査を行なうとともに、遺骨収集推進法の成立にともなう関連史料の収集や聞き取り調査に努めることとしたい。また、海外での史料調査・収集を行なうことにより、戦没者の遺骨および慰霊に関して外交史的な観点からマルチ・アーカイバルな論文の作成に着手することとしたい。現地フィールドワークに関しては、特に「戦没日本人之碑」の現状や慰霊巡拝の状況を把握するために、慎重に地域を選定して実施することとしたい。さらに、地域における戦没者慰霊研究として、青梅市の慰霊碑・慰霊祭の全体像についてまとめることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での史料調査を効率的に実施するために、本年度は海外における史料の所在状況を把握する調査を優先的に行い、実際の訪問調査を次年度に延期したことにより次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては、本年度の調査結果を踏まえ、海外の公文書館を訪問して史料調査・収集を行なうこととする。
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