本研究は、アジア・太平洋戦争の終結から1960年代に至る日本の「海外戦没者」の遺骨処理をめぐる政治外交プロセスを外交史的アプローチによって検討することを課題とするものである。本研究の結果、1950年代における英米との初期の交渉では、戦没者処理に関する国際規範が各国の交渉方針の策定に影響していたこと、遺族を中心とする国内世論と米国との交渉が日本の遺骨処理方針を規定する重要な要因となったこと、国内事情により千鳥ヶ淵戦没者墓苑が戦没者慰霊施設としての象徴性を後退させたことなどが明らかになった。これらを踏まえた研究書を刊行することで、本研究の成果を世に問うこととしたい。
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