研究課題
若手研究(B)
本研究は、中華人民共和国(中国)が諸外国の関係において台湾問題をめぐる「一つの中国」コンセンサスを形成する過程を、政治外交史の手法で論じた。本研究は、1970年代から80 年代にかけて、中国が西側諸国との外交関係を回復し、国際的な地位を向上させるなかで、相手国の「一つの中国」への関与を限定的ながら獲得した。しかし、それは台湾海峡における武力行使の可能性を低下させる関与でもあった。この国際社会との合意は、中国が1980年代以降推進する「平和統一」政策の重要な前提となった。
現代中国・台湾論
本研究には第一に、関係諸国の公開公文書や内部文書の活用により、改革開放の前提となる現代中国政治外交史を論じた実証的研究としての価値をもつ。第二に、本研究は「一つの中国」という関係諸国とのコンセンサスの形成と中国の対台湾政策の連関を論じたという点において、国際政治学的にはコンストラクティビズムの含意をもつ。第三に、本研究は一義的には政治外交史研究であるが、今日の「一つの中国」原則をめぐる国際政治や関係諸国の外交政策に示唆を与えるという現代的意義も期待される。