東アジアにおける地域協力は、1997~98年の東アジア金融危機の後、貿易自由化や金融・通貨の協力、地域協力機構の設立などの面において大きな進展を遂げた。一方、東アジア諸国は、国内政治・経済改革への取り組みに伴って開発主義国家を特徴とした国内政治経済体制が大きく変わってきた。本研究は、金融危機後の国内改革と地域協力の相互関係に焦点を絞り、国際政治経済論の視点から、東アジア地域協力の国内基盤を解明する。それを通じて理論面と実証面から東アジア地域統合論の構築に貢献することを目的とする。 30年度の研究は、研究資料の整理、東アジア地域主義の再考、研究論文の執筆と発表に集中した。具体的には、(1)これまで収集してきた六ヶ国の地域政策に関する資料を整理し、東アジア金融危機後の地域協力・統合の歩みをまとめた。(2)地域生産ネットワークを象徴とする経済地域化(regionalisation)と貿易・金融面における地域経済協力との関係を検討した上、東アジアの地域主義を再考した。(3)本研究に基づいて学術論文を執筆し、国内研究会と国際学会で研究発表を行った。 本年度の成果として、東アジアとEUの貿易関係と競争力に関する論文が出版された。また、5月に国内で開催されたグローバルガバナンス学会の研究大会、7月にブリスベンで開催され国際政治学会(International Political Science Association)の研究大会、9月にボストンで開催されたアメリカ政治学会(American Political Science Association)の年会、3月にトロントで開催された世界国際関係学会(International Studies Association)の年会で研究成果を発表した。
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