最終年度は、これまで積み残してきた「越境環境汚染」という争点領域の考察に着手した。具体的には、東北アジア・サブリージョンのひとつである日韓海峡圏を事例に、「海岸漂着ごみ」をめぐるクロスボーダー・コーポレーションの実態把握と課題の抽出を行った。考察結果から見えてきたことは、複数の広域地方政府が参加するマルチラテラルな実践の場(日韓海峡沿岸県市道交流知事会議)と2つの地方政府が取り組むバイラテラルな実践の場(長崎県対馬市と釜山広域市)のいずれのケースでも、学生・市民のボランティアを中心とした「環境教育型の協力関係」に力点が置かれていることである。このことは、サブリージョナルな争点志向型協力が<時間軸>に沿った他者肯定を媒介とする新しい秩序空間(時空)を築きつつあることを示唆している。以上の成果は、韓国済州大学国際学術シンポジウム(2019年5月)にて発表し、現地メディア(朝鮮日報、済州総合ニュース)でも取り上げられた。 このほか、サブリージョン協力が発展する条件を探るため、経済分野のサブリージョン協力を再考した。具体的には、環黄海圏と環日本海圏とを対比し、支援体制の比較考察を行った。これにより、地方政府の自律的な越境ネットワークとともに、国家、国際機関、地方政府の水平的な連携(パートナーシップ)の重要性が浮き彫りとなった。以上の成果は、日本・韓国・台湾の各大学が参加して台湾で開催された国際シンポジウム“Peace Forum in Taipei 2018”で報告し、英文出版に結び付けた。
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