平成29年度は、まず、前年度までの分析で明らかになってきていた越境大気汚染ネットワークについて、国連環境計画・アジア太平洋地域センターの担当職員、準地域越境大気汚染政府間会合交渉担当者、またその前担当者、関係研究者らに分析結果を送付し、内容を理解・分析を確認してもらった。その後論文を執筆し、香港大学で開催された国際政治学会・アジア太平洋年次大会にて、「協力・非協力の構造─アジア太平洋における越境大気汚染交渉」と題した英語の論文を成果の一部として英語で報告した。論文では、協力に進もうとするアクターがネットワークを形成する一方で、妨害アクターが協力枠組みから孤立していること、膠着した交渉を打開するアクターの存在等が分析から明らかになった。そして、分析結果に関連したネットワーク分析の複数の論点を挙げている。
水俣条約における協力については、聞き取り調査や事例の分析を進め、神戸国際会議場で開催された日本国際政治学会2017年大会、環境分科会にて、「ブラウンイシューにおける日本の環境外交の展開─オゾン・気候・BRS・水俣条約─」と題した共著英語論文の報告で一部成果を明らかにした。会場のコメントから、地球環境条約の世界の取り組み状況を評価した世界レベルの研究との有機的なつながりが分かった。分析結果は他の事例とともに暫定版であったので、コメントや質問、その後の研究会での議論を参考にしつつ、修正作業に移っている。他に、複数の修正論文もあるので、それらについても作業を進めてきている。
同時に、国連環境計画からの越境大気汚染についてのアジア太平洋の取り組みについての報告書作成の依頼があり、作成している。また、同機関の越境大気汚染政策ブリーフの中で、東南アジアの越境大気汚染協力についてもレビュアーとしてコメントをする機会ができ、これまでの研究の成果の一部を利用して実務面でも貢献することができた。
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