本研究の目的は、地域機構の紛争関与について対照的な事例であるアフリカとアジアの地域機構を事例に、紛争関与のメカニズムについて分析することであった。文献・資料収集や現地調査を経て、最終年度は三つの論文を執筆することができた。一つは、Why is ASEAN not intrusive? Non-interference meets state strengthと題する論文で、Journal of Contemporary East Asia Studiesに掲載された。この論文は、アフリカの地域機構の紛争関与の動態から得られた知見を踏まえ、東南アジア諸国連合(ASEAN)の紛争関与がなぜ控えめなのかを国家の強靭性の観点から分析した。二つめの論文は、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)とアフリカ連合(AU)の紛争関与における相互作用を分析した論考で、学術雑誌に掲載の予定になっている。最後の論文は、ECOWASの紛争関与が持続的になされている理由を加盟国間の相互作用から探ったもので、学術雑誌に投稿する予定である。いずれの論文も英語での成果発表であり、海外のアフリカ研究者や東南アジア研究者からのフィードバックを踏まえて、執筆することができた。 研究期間全体を通して、非常に効率的かつ有益な調査と分析ができた。特に、アフリカの地域機構であるAUとECOWASの本部(アディスアベバとアブジャ)で現地調査を実施できたことは、比較の視点を養うのに役に立った。上記の論文は、ASEANとECOWAS・AUを比較する形を取っていないものの、比較の視点でそれぞれの事例を分析したという点で、これまでの業績とは性質を異にするものだったと考える。これらの論文をもとに、二つの地域の地域機構を比較する論文を執筆する予定である。
|