リーマンショック以降各国中央銀行、金融監督当局では、資産バブルに対してどのような経済政策を採るべきかに関して大きな関心が寄せられている。資産バブルに対してどのような政策が望ましいのかに関しては二つの見方がある。一つの見方は、バブルはそもそもバブルかどうか分からず、仮に分かったとしても、バブルに対して何らかの金融規制を採るよりも、バブル期にはバブルを静観し、いざバブルが崩壊した後に目一杯救済政策を採れば良いという見方である。これは後始末戦略(clean up policy)と呼ばれ、金融危機以前では、米国の中央銀行を中心に大きな支持を集めていた。したがって、この見方はFed Viewとも呼ばれている。他方で、別の見方もある。それは、資産バブルの発生を防いだり、資産バブルが実体経済に与える影響や資産バブル崩壊の悪影響を緩和するためには、政府は資産バブルに対して何らかの事前規制を採るのが望ましいという見方である。これは事前規制戦略(lean against bubble policy)と呼ばれ、主にBISのエコノミストから大きな支持を集めている。したがって、この見方はBIS Viewとも呼ばれている。私の「資産バブルと経済政策」に関する一番の研究の目的は、資産バブルの発生と崩壊を前面に出した景気循環理論を構築した上で、バブル崩壊後の事後救済とバブル崩壊前の事前規制のどちらが経済厚生の観点から見て望ましいのかを、合理的バブル理論の観点から明らかにすることである。現在、理論分析に関しては6割程度終了した。特に、海外での研究セミナーを通じて多くのコメントを頂くことができた。
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