研究実績の概要 |
1980年以前までの経済危機の大きな原因の一つはインフレ率の乱高下であった。ところが、1980年以降、先進国を含む多くの国でインフレ率は低位安定化した。その一方で、株価・地価などの資産価格が大きく乱高下するようになった。いわゆるバブルの生成とその崩壊である。日本や北欧諸国における1980年代後半から1990年代初頭にかけての株価・地価の乱高下、90年代後半におきたIT関連株の価格高騰とその後の暴落、2000年半ばにかけて生じた欧米における住宅価格の乱高下はその代表である。なぜバブルは生じるのか、金融市場はバブル発生とどのような関係があるのか。バブルは実体経済にどのような影響をもたらすのか。バブル崩壊後、すぐに回復する経済があるのに対して、日本のように停滞してしまう経済があるが、この違いは一体どこから来るのだろうか。バブル崩壊後の成長パスはどのような要因に依存しているのか。日本のようにバブル崩壊後にずっと停滞してしまう経済があるのに対して、比較的すぐにV字回復する経済があるのはなぜか。多くの人がバブルは良くないものと考えているが、バブルが経済厚生に与える影響はどうか。どういうときにバブルは悪いのか。逆に望ましいバブルがあるとすればそれはどのようなバブルなのか。このような問いにマクロ経済理論の観点から答える論文を進めることができた。この論文は、科研期間中に、世界的な学術誌に掲載された。Hirano, Tomohiro and Noriyuki Yanagawa "Asset Bubbles, Endogenous Growth, and Financial Frictions," The Review of Economic Studies, 84 (1): 406-443, 2017.
|