結果を論文にまとめ,査読誌に投稿した.2017年度に引き続き,「応答者にとって諾否それぞれの利得が無差別になる配分が提案され,それが受諾される定常部分ゲーム完全均衡」以外の定常部分ゲーム完全均衡が存在しないことを示そうと努めた.しかし,示すことができず,断念した.最終年度であることから,これまで得られた結果を論文としてまとめた.論文は,名城大学経済学部ディスカッション・ペーパーとして公表するとともに,査読誌に投稿した. 論文の内容は次のようなものである.交渉決裂点が内生的に決まる繰り返し交渉モデルを構築した.2人のプレイヤーが毎期毎期余剰の配分について交渉する.各期において,まず,一方のプレイヤー(提案者)が余剰の配分を提案し,続いて,他方のプレイヤー(応答者)が提案への諾否を表明する.提案が受諾されれば,提案通りの配分が実現して次の期に移り(提案者は変わらない),拒否されれば,ある確率で交渉決裂点の配分が実現して次の期に移り(提案者が変わる),残りの確率で2人の関係は解消される.交渉決裂点の配分は,前の期に実現した配分である.各プレイヤーの利得は,各期で実現する配分での自身の取り分の割引現在価値の和である.「応答者にとって諾否それぞれの利得が無差別になる配分が提案され,それが受諾される定常部分ゲーム完全均衡」が唯一存在することを示した.さらに,この均衡利得と交互提案交渉ゲーム(Rubinsteinモデル)の均衡利得との関係を明らかにした. また,本研究に関連する論文をMathematical Social Sciencesに公刊した.
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