異なる対象を比較しそれぞれを評価する、あるいは集団内で利益分配をするというような場面での集団による意思決定問題を理論的に考察した。計画に則り、自身の過去の研究を踏まえ、既存の公平性を吟味する形で研究を進めた。前年度(最終年度)については特に、以下の研究を進展させた。 提携型ゲーム理論において、公平性に関する利益分配方法の性質として対称性と限界貢献度差依存性が知られている。対称性は同質と考えられる主体は等しい結果を得るという性質であり、また、限界貢献度差依存性は二主体間の結果の差はその二主体間の限界生産性(限界貢献度)の差のみに依存するという性質である。これらのお互いに異なる性質の背後にある要求を吟味することで、両性質を包含するより弱い公平性の性質を新しく定式化した。この新しい性質は既存の良く知られた(公平性とは異なる)性質と組み合わせることで、前述の既存の公平性をそれぞれ含意する。具体的には、ナルプレイヤー性と組み合わせることで対称性を含意し、また、加法性と組み合わせることで限界貢献度差依存性を含意する。ナルプレイヤー性や加法性は対称性や限界貢献度差依存性などと組み合わせて既存の様々な利益分配方法を特徴付けている。そのため、それらの様々な特徴付けはすべて新しい公平性で一般化が可能である。この結果はそれらの利益分配方法の公平性に関するより詳細な側面を明らかにする。これらをまとめた論文を国際学会で報告し、聴衆からのコメントを受け、その議論を深めた。
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