本研究では,スクロウプの植民地論を,彼の経済学全体との関わりにおいて明らかにした.スクロウプの経済学は,自然権論をベースに,財産権が認められる要件,政府の役割,そしてとりわけ土地に関する制度の重要性を説いた.彼の植民地論にはこうした特徴が色濃く反映されていた.植民地の存在は貧困についての政治的要因や政府の責任の軽視につながるマルサス人口論批判の論拠とされた.組織的植民政策批判においては土地制度論,特に自給的小土地所有農業の擁護論がその核となった.他方で,アイルランドの貧困・土地問題の解決策としての植民論を強く批判したスクロウプは,自然権論と土地制度論をベースに,「自国の植民」を提唱した.
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