研究課題/領域番号 |
15K17036
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小林 弦矢 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (00725103)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ベイズモデル / 操作変数 / Bスプライン / ディリクレ過程 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
内生的な共変量がモデルに含まれる際の,被説明変数の条件付分布を柔軟に推定するために,操作変数法を用いたノンパラメトリック回帰モデルを考案し,ベイズ推定の枠組みでマルコフ連鎖モンテカルロ法に基づいたモデルの推定方法を開発した.具体的には位置尺度モデルを考え,一段回目と二段階目の回帰モデルに操作変数と内生変数の非線形な関数を導入し,さらに二段階目の回帰モデルの誤差の分散に対しても共変量の非線形な関数を導入した.そして誤差分布を柔軟にモデル化するために,誤差分散にコレスキー分解を適用し,ディリクレ過程によって二変量正規分布のディリクレ過程混合モデルを考えた.提案するモデルには複雑であるが,ディリクレ過程に関する変数をサンプリングするスライスサンプラーと,分散関数に関する変数をサンプリングする混合サンプラーからなるマルコフ連鎖モンテカルロ法を適用することによって,効率的にモデルを推定することが出来る.提案するモデルは戦前の日本の各都道府県の死亡率と医師数に関するデータに対して適用した.ここで,医師数は各都道府県の観測することができないウェルスとの相関を持っていることが考えられるので内生変数として扱う.操作変数は各都道府県の面積を用いることにした.医師が増えるに従って死亡率が減少するという結果が得られた.またDICやWAICなどの情報量基準に基づき,医師の死亡率に対する効果が非線形的であるモデルが支持されるという結果も得られた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値実験により提案するモデルが既存の分散関数のないモデルよりも条件付き分布の推定においてよりよいパフォーマンスを持つことがわかった.モデルが複雑なため一回の数値実験にかかる時間がかなり長いが,研究はおおむね順調に進んでいると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
上記のモデルは柔軟ではあるが,いわゆる内生変数の被説明変数の条件付分布の分位点に関する因果効果を被説明変数への全体の効果から分離することができないため,因果効果そのものを推定するために別のアプローチを取る必要があると考えられる.具体的には本研究課題の初年度に提案したコントロール変数を用いた分位点回帰モデルをより柔軟なものに拡張することが考えられる.
|