今年度は,被説明変数の分位点に非線形な効果をもつ分位点回帰モデルを取り上げた.非線形なコンポネントを持つ分位点回帰モデルは,通常の線形分位点回帰のように非対称ラプラス分布を誤差項に仮定することで定式化することが可能であるが,サンプル数が少ない場合や,分布の裾にあたる分位点を推定する場合には,過適合などにより推定結果が不安手になってしまい,分位点の単調性を満たさなかったり解釈可能性に欠けたりしてしまうことが起きる.本研究課題て取り上げるような内生変数を含むモデルにおいては,これは大きな問題である.よって,本研究ではデータの分布としては形状に大きな制約がある非対称ラプラス分布の代わりに,誤差項をより柔軟な一般化非対称ラプラス分布を分位点回帰モデルによって,また非線形コンポネントはガウス過程によって新たな非線形分位点回帰モデルの定式化を行った.またガウス過程を用いた非線形関数の形状制約の導入も分位点回帰モデルの枠組みで試みた.数値実験の結果より,提案するモデルのほうが非対称ラプラス分布を用いたモデルよりも安定的に分位点を推定できることがわかった.また労働・環境・所得などの実データへの適用から,提案するモデルからはより安定的で解釈可能性が高い推定結果が得られることがわかった.ここまでの研究結果は,国際学会EcoSta2017での招待講演で報告を行った.また本研究結果を所得分布の小地域推定への応用を考え,観測された頻度分布から各地域の平均所得推定を行うことを試みた.これに関する研究結果はSAE2017において報告された.数値実験において期待していたよりもかなり長く時間がかかったため,一般化非対称ラプラス分布を用いた分位点回帰の内生変数モデルは今後引き続き研究を行っていく.
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