研究課題/領域番号 |
15K17037
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 慎 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (20723852)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ボラティリティ / 高頻度データ / 日中周期性 / マクロ経済指数 / price impact / order flow |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、金融資産の高頻度データ(日中の取引を1分や1秒などの高頻度で記録したもの)を用いて、資産価格のボラティリティや取引高などの統計的性質を適切に反映させた統計モデルを提案し、金融市場リスクの推定・予測の改善を通じて金融市場安定化に貢献することである。高頻度データから得られる資産収益率や取引高などの市場変数には、内生性や周期性などが存在するため、適切な計量的・統計的分析手法を用いることが重要となる。
当該年度に実施した研究では、内生性を考慮していない従来のモデルを改良し、米国の株式指数先物(Emini S&P 500)の高頻度データを用いて、その収益率と取引不均衡(買い取引高と売り取引高の差)の間の関係を分析した。また、失業率などのマクロ経済指数の発表がその関係に与える影響も検証した。その結果、次のような結果が得られた。1. 収益率と取引不均衡の間には統計的に有意な内生性が存在し、従来のモデルは取引不均衡の収益率への影響を過大に評価する傾向がある。2. 収益率と取引不均衡の関係は時間を通じて一定ではなく、特に2008年から2009年の金融危機の間には大きく変化する。3. 収益率と取引不均衡の関係は、先行研究で示されたような日中周期性を示す。4. 失業率などのマクロ経済指数の発表時には取引不均衡へのショックの分散が上昇する一方で、流動性リスク(資産収益率の分散のうち取引不均衡へのショックに起因する分散の割合)は低下する。
上記の研究成果を2015年8月に行われた「Hitotsubashi Summer Institute Workshop "Frontiers in Financial Econometrics"」で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度には、「研究計画・方法(概要)」で提示した3つのテーマのうち、次の2つのテーマについて研究を進める予定であった。 (A) 市場変数の内生性・周期性・ニュースインパクトの推定 (B) ボラティリティモデルによる市場リスクの予測
(A)については、当初の計画通りに分析を進めることができ、研究成果を研究集会で報告することができた。(B)については、ボラティリティを2つの要素に分解し、その特性を分析することはできたが、その2つの要素がボラティリティ予測にどの程度有効かを検証することはできなかった。したがって、現在までの進捗状況は「(3)やや遅れている」に該当すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に実行できなかった点も含め、引き続き研究を進める。また、研究成果を学術誌に投稿し、国内外の学会等で研究報告を行う。さらに、「研究計画・方法(概要)」で提示した3つ目のテーマ「(C) バリアンス・リスク・プレミアムによる市場リスクの分析」に着手する予定である。
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