注文不均衡(買い取引高と売り取引高の差)と価格変化率の間の動的関係を構造型自己回帰(Structural Vector Autoregressive)モデルを用いて推定した。注文不均衡が価格に与える影響(価格インパクトまたは市場インパクト)は、単純な手法では適切に推定できない(バイアスがある)が、本研究で用いた手法ではバイアスを修正できることが確認された。また、価格インパクトは取引時間中に大きく変動し、マクロ経済指数の公表によっても変化することが確認された。この研究成果を、2018年6月に慶応義塾大学経済研究所で行われた「計量経済学ワークショップ」において報告した。
また、金融資産の日次リターンと、日中リターンから計算されるボラティリティの推定値である実現ボラティリティ(Realized Volatility)を、同時に定式化するRealized Stochastic Volatilityモデルを、Azzaliniのskew-t分布を用いて、日次リターンの分布により柔軟に対応できるように拡張した。拡張したモデルを日米の株価指数に応用し、データへの適合度が改善されることが確認された。さらに、ボラティリティとリターンの予測分布から、金融資産のリスクを測る指標として用いられるバリュー・アット・リスク(Value-at-Risk)と期待ショートフォール(Expected Shortfall)を計算し、それらの精度が改善されることを示した。この研究成果を、2018年12月にピサ大学で行われた「12th International Conference on Computational and Financial Econometrics」において報告した。
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