研究課題/領域番号 |
15K17040
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
三好 向洋 愛知学院大学, 経済学部, 講師 (10636244)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 所得格差 / 男女間賃金格差 |
研究実績の概要 |
2000年代以降の所得格差の推移について、所得格差の指標としてよく用いられるジニ係数や相対的貧困度から見てみると、各統計間でそれらの指標は同じような推移を見せているものの、算出された指標は大きな乖離がある。具体的には、国民生活基礎調査や所得再分配調査を用いて算出された格差の指標は、全国消費実態調査を用いて算出された格差の指標より大きい傾向がある。2000年代に日本の所得格差が上昇している原因を分析するという計画を達成するためには、なぜこのような差が統計間で生まれているのかを明らかにしておく必要があるため、国民生活基礎調査と全国消費実態調査での所得格差指標の差が生まれる原因について分析を進めている。 その他、男女間賃金格差が2000年代にかけて縮小した原因を分析した。時間当たり賃金でみた男女間賃金格差は年々縮小しているが、その原因が学歴や経験年数といった属性に差がなくなったからなのか、それとも、それら属性が同一だとしても各属性に関する賃金としての評価の差が無くなったからなのかについて検討している。分位点回帰という、賃金上位層と賃金下位層では属性に関する評価が必ずしも同一ではないと仮定する分析によって次のことが明らかになった。賃金上位層における男女間賃金格差の縮小は主に学歴や経験年数といった属性の差が縮小したことによってもたらされており、評価の差の縮小は殆ど見られていない。一方、賃金下位層における格差の縮小は評価の差の縮小によってもたらされており、学歴や経験年数といった属性の差の縮小はほとんど貢献していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
政府統計の個票の利用申請について財務総合政策研究所と協力しながら進めており、入手できた統計については分析が計画通り進行している
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今後の研究の推進方策 |
主に国民生活基礎調査と全国消費実態調査での所得格差指標の差が生まれる原因について分析を進めて、具体的には各統計間で世帯主年齢や世帯人員数などの世帯構成に関する分布を比較し、その分布の差を調整したうえでも所得分布に差が生まれるのか、生まれるとしたらどちらの統計が低所得者に偏っているのかを明らかにし、現実の日本の所得格差を指標として正しく表しているのはどちらなのか、また、どうすれば指標の修正が行えるかを検討していく。その後、高齢化がどの程度格差の進行に影響を与えているかを分析し、それ以外にはどのようなことが考えられるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
統計ごとに格差の指標が異なっており、実際の分析に入る前にどちらの統計を利用するべきか検討する時間がかかり、打ち合わせと分析場所の移動のために用いる旅費が計画よりも少なくなってしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
全国消費実態調査と国民生活基礎調査をそれぞれ利用申請して分析を行う。その際は東京の財務総合政策研究所でデータの管理及び分析を行うためそのための旅費として用いる。また、分析用PCをあらたに購入し、賃金格差が生まれる原因についての分析も行う。
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