研究課題/領域番号 |
15K17042
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 久光 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (30540984)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生産性 / 多国籍企業 / 参入・退出 |
研究実績の概要 |
多国籍企業の参入が受入国の経済に与える影響を明らかにするため,平成28年度は主に,統計データの整理と分析方法の検討を行った.多国籍企業の参入による地場企業への経済的影響を評価するにあたり,本研究では,生産性を具体的な経営指標としてもちいる.そこで,前年度に収集したインドネシアの工業統計表個票データについて,生産性分析に向けたデータ整理を行った. 既存研究によると,一般的に地場企業は多国籍企業からのスピルオーバー効果により,その生産性を向上させている.ただし,近年の生産性分析では,企業のマイクロデータの利用が進み,スピルオーバー効果の推定方法についても大きな改善がみられる.本研究でも同様のデータを使用することから,分析方法について文献整理をし,さらに,日本企業のマイクロデータにその手法を適用し,スピルオーバー効果の推定を行った.その概要は以下のとおりである. 他の企業の集積から生じるスピルオーバー効果により生産性が向上した企業は,熟練労働などの生産要素をより集約的に用いた生産が可能となり,その結果,製品の品質も改善すると考えられる.そこで,我が国製造業のマイクロデータをもとに,企業の集積がその地域で生産される財の品質改善に与える影響を,旧来の手法と近年改善された手法の二つの手法を用いて推定した.その結果,どちらの手法でも企業の集積が進む地域で生産される財ほど,その品質が高まる傾向にあることを確認できたが,改善された手法を用いた場合の方がスピルオーバー効果がより顕著で,その手法の有効性が確認される結果となった.スピルオーバー効果の実証研究では,これまで生産性向上効果に分析の焦点が当てられており,スピルオーバー効果が生産性向上および財の品質改善を通じて企業の利潤を高める効果をもつことを示した本研究の成果は,経済学的にも重要な意義を持つ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,前年度に収集したインドネシアのマイクロデータを整理し,実証分析に向け,分析方法の整理・検討を行った.具体的には,マイクロデータを利用した生産性分析の既存研究をもとに分析手法を整理し,我が国製造業のマイクロデータに近年改善された分析手法を適用することで,その有効性を確認した.その分析結果は論文としてまとめられ,ディスカッションペーパーとして公表されている.以上の作業は,平成28年度の研究実施計画に沿って行われ,その成果も研究計画において期待されたものである.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,平成28年度に整理したデータを使い,実証モデルを推定する.推定結果をもとに,多国籍企業が受入国経済において果たす役割について考察し,直接投資の誘致による経済発展を進めたい発展途上国に対して,新たな政策提言を導出する.
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