研究課題
本研究の目的は、社会・経済変化の過程における制度と人間行動との相互作用を研究することである。平成28年度は、本プロジェクトの2年目にあたり、主として、以下の4つの研究活動を行った。(1)「難民の経済的帰結」に関する実証研究に取り組み、その成果を論文に取りまとめて、国際会議で研究報告した。具体的には、ポル・ポト政権崩壊時(1978年~1980年)に大量発生したカンボジア難民を対象として、1998年人口センサス全個票を用いて、タイとベトナムからの帰還者と非難民を識別し、労働や子供の教育アウトカムを比較検討した。タイからの帰還者は、非難民に比べて労働アウトカムが低いが、ベトナムからの帰還者にはそのような影響が見られないことを明らかにした。(2)「カンボジア大虐殺の長期的影響」に関する論文を改訂し、査読付き国際学会誌に投稿した。具体的には、実証分析の結果の頑健性を示す証拠をさらに追加し、大虐殺が親の教育投資に与えるメカニズムの考察をさらに深めた。(3)歴史出来事が現代の経済成果に与えるミクロレベルでの因果効果の識別に関して、既存研究の精査をさらに進めて、その成果を論文に取りまとめて、研究報告を行った。標準的な分析枠組みである潜在アウトカムアプローチ(potential outcomes framework)に基づいて、ミクロデータを用いた既存の実証研究が直面している概念的・計量経済学的問題を明らかにし、代替的アプローチを提案した。(4)現地カウンターパートを連携し、一部遅れが生じていたデータ収集作業を継続した。
3: やや遅れている
本研究プロジェクトに密接に関連する時空間データを用いた因果推論の考察をさらに深める必要が生じ、当初の研究計画の見直しを行ったため。
引き続き、研究計画に基づいて、作業を進める。また、平成28年度の研究成果を踏まえて、時空間データを用いた因果推論の一般化にも取り組む。
平成28年度は、作業の進捗にあわせて、効率的な研究費の使用を心がけたところ、未使用額が発生した。
平成28年度の未使用額は、平成29年度の研究費とあわせて、主に、国内・国際学会等への参加旅費、専門書の購入、論文の校閲などに使用することを予定している。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Discussion Paper in Economics and Business No 16-30, Osaka University, HIAS Discussion Paper E-39, Hitotsubashi University, CIRJE Discussion Paper 1034, University of Tokyo
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http://www2.econ.osaka-u.ac.jp/library/global/dp/1630.pdf, http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/28223/1/070_hiasDP-E-39.pdf